キーワードは「ビーガン」「リージョナル」「スーパーフード」~BioNordに見るドイツオーガニック市場のトレンド~vol.4

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BioNordとは
BioNordは、ドイツで2004年から開催されているオーガニック見本市BioMessenの1つで、今年は9月14日に北部の都市Hannoverで開催されました。BioMessenは他にも、東部、西部、南部の計4か所で開催されています。ドイツのオーガニック見本市といえば2月に開催されるBioFachが有名ですが、BioNordはより小規模で国内のバイヤー向けに特化されたものです。それでも、388社もの企業・団体が出展し、4000人以上の来場者が訪れました。企画運営には40年前から有機農業運動に携わってきた業界のパイオニア的企業が中心となっており、理念や運動色の強い「ハードコア」な出展者の多いことが特色だそうですが、新参者にも広く門戸を開き、会場は明るくモダンな雰囲気。業界大手のRapunzelやVoekelといった企業も参加しています。こちらの見本市で見られた、ドイツのオーガニック市場のトレンドについてレポートします。

競争を超えて
ビーガン(Vegan)、地元志向(Regional)、ロー&スーパーフード(Raw & Super Food)という3つのキーワードは、オーガニック製品に対する需要と供給のトレンドを表すものですが、いずれもオーガニック製品に何らかの価値を付加するものです。その背景には、単にオーガニックであるだけでは生き残ることができないような、オーガニック市場の競争の激化があると考えられます。またその付加する価値として、ビーガンや地元志向、スーパーフードはそれぞれ異なるベクトルを持つようにも見えました。市場の広がりによって消費者の購入動機も多様化してきていることを実感する展示会でもありました。

今回、BioNordを訪れて印象的だったのは、業界のパイオニア的企業から最大手のメーカー、若手が起業したばかりの小さな企業まで、多様な出展者が一堂に会していることでした。ドイツのオーガニック市場は日本の7倍の大きさを持ち、激しい競争もありますが、その一方で、こうしてコミュニティーの一員として1つのアンブレラの下に集まることができていることに、ドイツのオーガニック業界の強みがあるようにも感じました。

そのような強みの源泉をKarinさんに尋ねてみると、「ドイツのオーガニック業界には集う場所がたくさんあるからではないか」、という回答が返ってきました。例えば、業界最大手メーカーのRapunzelは、2年に1回、「One World Award(ワンワールド・アワード)」という表彰イベントを開催し、そこへ業界の関係者を分け隔てなく招待しているのだそうです。企業の創設者や先駆的な活動家がお互いのことをよく知っており、仲間としての「空気」を維持していこうとしていることが、コミュニティーの形成に役立っている、とのことでした。また、ドイツでは『Schrot & Korn』のようなオーガニック専門のフリーペーパーが発行され、消費者に対し有機農業に関連する情報を効率的に伝えることができていることも、業界の大きな強みになっているそうです。こうした取り組みは、簡単そうに見えて、なかなか難しいことかと思います。まだまだ、ドイツに学ぶべきことはたくさんありそうです。

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執筆者:谷口 葉子

宮城大学食産業学部助教。大阪府生まれ。メリーランド大学公共政策研究科修士課程修了(公共管理学修士)。神戸大学自然科学研究科博士後期課程修了(農学博士)。有機食品の流通や消費をテーマに研究を行っている。

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