有機JAS制度施行3年 IFOAMジャパンの活動 (今井 登志樹)

2001年4月、21世紀の幕開けと同時に有機JAS制度が本格施行された。

 
有機農業を促進、発展させるといった政策から施行されたものでなく、消費者の「有機」に対する混乱を是正するための法律であることに不満は残るが、それまで曖味であった「有機農産物・有機農産物加工食品=有機食品」の基準や表示が、この制度のスタートにより明らかなものとなった。生産者には有機農産物生産の指標が示され、流通者・販売者は商品を評価する基準を持つことになった。消費者もまた、登録認定機関という第三者の検査・認証に裏打ちされた「より確かな食品」を、有機JASマークが商品に表示されることで容易に確認出来るようになった。これにより、それまでの生産者と消費者の直接交流による「提携」であるとか、「会員制宅配」など、クローズであった「有機農産物」の流通が、一気にオープンな市場に流れ出すことになり、有機食品マーケットの拡大が注目され、国内の有機農業の増大が熱く期待された。

 
有機JAS制度の施行された後、2001年秋に国内初のBSE発生があり、2002年に食品の表示偽装の摘発が相次いだ。こうした事件を背景として消費者の食の安全を望む声は一過性のものでなく、恒常的なものとなった。
有機食品に必須であるトレーサビリティ=食品生産履歴も、流行語のようになり、BSE後の牛に始まり、全国農業共同組合中央会=全中でも2006年末をメドとして、全国の農協を通して出荷する全ての肉、野菜の生産履歴をインターネットで確認するシステムを構築すると発表した。
こうした一連の流れは、これまでの食料生産・供給の結果として起こるべくして起こり、有機JAS制度のシステムが食全体の質を底上げするものとして作用したと云えるだろう。食の安全に向かう流れは止まることなく、その質の到達点として有機農産物・有機食品があることが、徐々にではあるが揺るがぬものとして社会的に浸透を始めた。2003年9月で有機JAS制度本格施行後30ヶ月となる。登録認定機関も60余を数え、有機認証件数も8月現在、製造者1083生産行程管理者2008小分け業者587輸入業者101の合計3779を数えるまでになった。

 
多くのレストランを始め居酒屋まで、有機農産物の野菜は勿論、豆腐や納豆、調味料に有機JASマークの表示されたものが使用され、オーガニックを謳うカフェが次々と誕生した。若者向けの雑誌でも「オーガニック」な音楽・ファッション・気分が大流行りである。
量販店でも有機農産物のコーナーが、どこでも見られるようになった。原材料の殆どを有機食材とするファミリーレストランが東京・駒沢公園に誕生し、盛況であるという。名古屋・一宮では有機JASに特化したスーパーマーケットが開店した。有機食品が、日本の食のメインストリームに向かう下地は整ったのだ。
IFOAMジャパンの今年度の活動をお知らせしたいが紙幅尽きた。3回目を迎えた自然の恵みフェアを迎え、次は11月に日本の有機農業・市場動向を報告するシンポジウムを開催する。現在、生産者・製造者・流通・販売・消費者・行政に向けたアンケート調査を行い、報告書作成を急いでいる。また、このシンポジウムではもう一つのテーマを置き、国策として有機農業を推進する韓国・中国の有機農業関係者を招き、それぞれの取り組みを聞き、意見を交換する予定だ。詳しい内容については、別チラシをご覧頂きたい。

 
海外、国内の有機農業に関する情報を、発信する情報サービスもこの秋から始まった。会員、賛助会員、情報会員(仮称)として、国内の有機農業の発展を支援するIFOAMジャパンの活動に多くの団体・個人が参加されることをお願いする。

*IFOAM(国際有機農業運動連盟) 1972年パリ郊外で設立。現在、100ヵ国以上、900の団体がIFOAMに加盟し、有機農業を軸とした環境問題全般に取組んでいる。

 
出典:BioFach Japan 2003 公式ガイドブック
執筆者:IFOAMジャパン事務局長 今井登志樹

IFOAMジャパン:
2001年8月NPO法人として発足。IFOAMに加盟し、有機農業運動を積極的に進めてきた生産者、流通団体、登録認定機関などが中心となり、賛助会員とともに日本の有機農業発展に向けた諸活動を行う。

特定非営利活動法人(NPO法人)秀明自然農法ネットワーク:
農薬と化学肥料に汚染された環境を、岡田茂吉氏の提唱する自然農法活動により再生していくことを目的としています。自然を尊重し、順応していく自然農法は、自然のサイクルを圃場に再現していく再生可能な農業です。健全な環境と食生活は、人々を幸せに導いてくれます。子どもたちは農薬、化学肥料を使用しない安全な土や作物に触れることで情操を高め、大地と生命の尊さを学び、健全に育つことができます。秀明自然農法ネットワークは、同じ志を持つ団体、個人との情報提供・情報交換を通じて世界的なネットワークを構築し、その活動を支援し、消費者である大人や子どもたちを含めた全ての人々に、食や農業の情報提供や講演会などを行っていきます。
問合せ先:
〒529-l814 滋賀県甲賀部信楽町田代316
電話 0748-82-7855 FAX 0748-82-7357
Eメールアドレス snn@snnnet.jp
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