有機認証の品質と効率(作吉 むつ美)

農林水産省が発表した年のデータによれば、日本国内での認定された事業者の件数は、3,485件。外国の事業者をすべて日本の認定機関(現在69認定機関が登録)が認定したと乱暴に仮定してみても、一機関での件数は平均すると58件という計算になる。実際には、数社が300~400件程度、推定で十社程度が80~150件程度の事業者を認定している。40件以下の認定機関の数はかなり多い。もちろん、認定事業者数の数が少なくても、一事業者が大きなグループ(例:生産農家数30戸以上)ということもあるため、単純に数で認定事業を評価することはできない。しかし、40件以下では、事業としての成立が困難であろうことは容易に推測できる。検査員と同様、その技量も問われるわけだが、この数では公開されている認定手数料から計算すると、事業として成り立ちそうにない。実態は、ボランティア的報酬による支えや、他事業による収入などでなんとか続けているというところが多い。

 

表1でみるように、世界各地で有機認証は発展しているが、日本はそのなかでも認定機関数が多い国だ。だからといって、際立って認定件数が多いというわけではない。私の知る大手認定機関では、他のプログラムの認定もあわせれば、千件単位で事業展開している例が多い。重ねていうが、そうした認定機関が必ずしも質の高い認定を行っているという意味ではない。しかし、効率的、効果的な認定を行うために、組織力・経済力を使って、システムの確立や人材育成に投資できているところがあるといえる。

 

話しを日本にもどそう。昨今の日本の社会倫理では「コンプライアンス」がもっとも重要な鍵であるかにみえる。しかしこれは有機に限ったことではない。食品だけをとっても、産地偽装をはじめどれだけの”おじぎ”を記者会見でみているだろうか。
昨年、このコラムに食品の有機業界は元気がないと記した。その印象は今でも変わらない。むしろ萎縮しているといったほうがいいかもしれない。次々と増える参照すべき法令やチェック項目。生産者はそれらを忠実に守っても別に売り上げがあがるわけではない。認証に携わる者も、検査や認定をもらさずにやったところで、報酬や社会評価があがるわけではない。私たちは普通の人間である。これではいっこうにモチベーションはあがらないではないか。

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