ドイツオーガニック業界の歩みと動向(浅野・レッケブッシュ 経緯子)

第2の波は、2000年の暮れも押し迫った頃、突然降って湧いたかのようにやって来た。政府機関がドイツの牛肉は安全ですと強調した直後に、狂牛病がドイツ国内でも発覚したのである。食の安全に対する関心は、もはや社会の特定層の関心に留まらなくなったのである。2001年のBioFachでは、素早く認定制度や組織の整備に着手したDemeterやBioland(ビオランド)等の認定機関や、新製品の開発をスピードアップしたRapunzel社のブースが一段と賑わっていた。経営陣からは、「すぐに利益をあげることより、自分達が正しいと思う事を行っていきたい」とする明確なミッションが返ってきた。信念を持って使命を全うする仕事師達は、信頼のおける生産者、供給業者、流通業者とパートナーを組み、独自の資材調達・販売ネットワークを素早く形成していった。このネットワークの質の差が、今日の業績の良し悪しを決定していると言っても過言ではない。また、BioFachの会場に著名なオピニオンリーダー達が招かれるようになったのもこの時期である。

一方、消費者はオーガニック製品が安全な品質というベネフィットを自分達に提供してくれることを認知するようになった。しかし、可処分所得が低く、価格に敏感なドイツの消費者は、すぐにオーガニック製品には飛びつかなかった。当時、平均して40〜50%は高いといわれていたオーガニック製品、とりわけ問題となった牛肉の値段には大きな開きがあったからだ。高所得者層や有識者は、生鮮食品の一部をオーガニック製品に切り替えていったが、多くの消費者は牛肉を買い控えたり、代替製品でしのぎを削ったのである。ある調査結果によると、ドイツでは生活費の約12%が食費となっており、ヨーロッパの中でもエンゲル係数が低い国に数えられている。通常の食品よりも高いオーガニック食品、ましてやオーガニックコスメや衣料を購入するという決定にまでは至らなかったのだ。

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