有機畜産物の認定の現状(自然と農業編集部)

昨年の11月、食肉としては日本初となる「有機牛肉」に続き、今年の6月に「オーガニック・チキン」が誕生しました。2005年から開始された有機畜産物のJAS認定公示から4年が経ち、JAS認定された有機畜産物は牛乳、鶏卵に続いて鶏肉が仲間入りしました。
日本でも消費者等からの有機畜産に対する期待は徐々に高まりつつあり、国産の有機畜産物が、少量ではありますが市場に流通し始めていることは喜ばしいことであります。
そこで、有機畜産物のJAS認定が公示されたこの4年間の有機畜産物の認定状況を振り返った上で、入手が非常に困難となりつつある有機飼料の問題や有機畜産の生産性と経済性をどのように確保すべきかなど中心に有機畜産が抱えている課題について紹介します。

 

●牛乳、乳製品

日本における有機JAS畜産物の認定の取得状況(2009年7月時点)は表のとおりです。日本で初めての有機畜産物の認定は2006年5月に北海道の津別町有機酪農研究会のオーガニック牛乳でした。登録認定機関は北農会有機認証センター。この牛乳は有機加工食品の認定を取得した明治乳業札幌工場で製造・加工され「明治オーガニック牛乳」ブランドで販売を開始している。生協を中心に販売量は着実に伸びているという。明治乳業以外にも二か所で牛乳の認定が行われています。そのうちの一社が大手居酒屋グループのワタミファームです。北海道にある同社直営農場の瀬棚農場で牛乳と卵の有機畜産物の認定を取得しています。卵は日本初の有機畜産物の認定となりました。グループ内流通をメインとしており、有機牛乳のほか有機チーズやバター等を有機加工食品の認定を受けた自社工場で製造しています。もう一社は、千葉県の大事牧場です。同牧場では有機JASの認証を取得する以前から日本で初めてオーガニック牛乳をQAIで第三者認定を取得し、コンビニを中心に販売を行ってきました。今回、有機畜産物の認定を取得し、アイシーエス日本で有機加工食品の認定を取得しているタカナシ乳業で製造を行い「タカナシ有機牛乳」として2007年1月から販売を開始しています。

 

●牛肉

2008年11月に有機牛乳を生産している津別町有機酪農研究会が有機畜産物でJAS認証を取得しています。
有機牛肉の初出荷は今年の6月に行われました。これは同研究会が生産している有機牛乳の生産の役目を終えた乳牛の肉を加工したものです。今後はメンバーの5戸が年間合計50頭ほどを出荷する予定です。有機牛肉は、有機牛乳と同様に3年間、農薬や化学肥料を一切使わない畑で栽培される飼料を食べ、出荷される肉です。出荷に至る移送、と畜、保管などの工程は全て有機でない一般の牛と分離して行われています。
同研究会は有機牛乳生産の取り組みと並行して19年から有機牛肉出荷の道も探り、昨年11月にJASの認証を受けた。
と畜は大空町東藻琴の北海道畜産公社北見事業所で行い、津別町農協と有機野菜の取引がある日本販売農業協同組合連合会(日販連)を通じ、関東圏の加工会社グループに流通しています(ブランド名は現在検討中で「未定」)。将来的には有機の肥育牛の飼育も視野に入れているとのことです。

 

●鶏卵

ワタミファーム瀬棚農場以外に山梨県の黒富士農場が有機畜産物の認定を取得しました。同社の有機卵の生産は、7年前の2002年から日本オーガニック農産物協会の第三者認証を取得し、外資系のカルフーズ幕張店で販売されるなど注目されました。有機JASの認定取得後、高級スーパーや百貨店で販売され、1個100円前後の高値にもかかわらず売れ行きは上申傾向にあるといいます。

 

●ブロイラー

今年6月に茨城県の内外食品グループが「オーガニック・チキン」として取得しました。食肉としては日本初となります。生産部門は(有)共栄ファーム、食鳥処理は(有)茨城内外食品、小分け加工は(株)ジィシーフーズが行っています。同社は、7年前に日本オーガニック農産物協会の基準に基づき第三者認証を取得しており、有機畜産が法制化されたことをきっかけに申請を行い、審査・判定を受けてこのたび日本初の認定となりました。主な販売先は、らでぃっしゅぼうやです。

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