オーガニックコットンの現況と認証の問題点(日比 暉)

4. オーガニック・テキスタイル世界基準について

GOTSオーガニック・テキスタイル世界基準(Global Organic Textile Standard) は、JOCAを含む代表的な国際基準機関によって策定された。原料の収穫から環境に優しく社会的に責任のある製造を経て、消費者に信頼できる保証を与えるラベリングに到るまで、「繊維製品が正しくオーガニックである」という状況を確保する世界的なルールとして開発された。

 

GOTSは、オーガニック繊維の消費増進と、オーガニックに関する統一した判定基準が必要であるとする製造業者や小売業者によって支持され、現在では世界的に高い評価を得ており、世界の主要なマーケットに通用する「オーガニックの認証」となっている。

 

GOTS は、オーガニック繊維製品が、消費者の信頼を得るために必要な国際的な認証システムとして、世界の繊維製品生産流通の業界で認められつつある。

 

 

5. GOTSと日本の繊維産業構造

GOTSはオーガニック繊維製品の認証基準として、ほぼ完璧な内容を備えており、国際的な取引においては一般的なルールとして採用されていくこととなろう。

 

しかし、欠点もある。認証費用の問題である。特に、日本の繊維製造業界では多品種少量生産になっており、モノづくりに沢山の工場・会社が関与する構造になっているので、GOTSの認証経費は過大なものとなる。

 

いまや世界の繊維製品の生産基地となっている中国をはじめ東南アジア諸国では、大量生産方式で操業しているから、認証コストを比較的軽く吸収することができるが、それに対して日本やイタリアなどの先進国型の製造システムでは多くの工場が係るため、その認証費用が重荷となって、GOTSの認証に頼ることができない会社が少なくない。

 

6. 打開策としてのトレーサビリティ認証

JOCA(日本オーガニックコットン協会)は、GOTSの策定機関としてGOTS基準構築を推進してきたが、一方、国内で10年間続けてきたドキュメント(書類)方式の認証は、GOTS基準と相容れないものとして2011年9月をもって中止することとなった。

 

昨年4月に中小企業基盤整備機構から発表された経産省の『オーガニックコットンに係る表示ガイドライン』は、オーガニック・コットンに対する消費者の信頼を維持していく上で、順守されるべき指針であることは間違いない。

 

2011年10月からは、第三者機関のJONA(日本オーガニック&ナチュラルフーズ協会)がトレーサビリティ認証を実施することとなり、これまでのJOCA認証に近い形で、オーガニック・コットンのトレーサビリティ認証が行われることとなった。認証の対象をトレーサビリティだけに絞ることにより認証コストを抑えようという試みである。化学薬品の使用や品質面については、関係企業(ブランド)の基準と責任のもとに順守されるべきという考えである。

 

2011年については、このうち、いくつかの会社はオーガニック・コットン製品の取扱量をさらに倍増する方針を進めており、2012年についても同じ積極的な方針を維持すると言明している。

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