畜産における有機JAS規格スタートとその後(自然と農業編集部)

昨年の検討段階から遂に施行されたJAS規格の有機畜産。この規格の制定によって、牛、馬、めん羊、山羊、豚、鶏、うずら、あひる、かもについて、JASマークをつけて有機またはオーガニックと表示した商品を販売することが可能となります。
昨年11月の完全施行からすでに9ヶ月が過ぎていますが、現在のところJASの有機畜産物として申請されているのは北海道のメーカーが申請している有機牛乳のみです。施行された段階で多くの商品が申請されなかったのは何故でしょうか。
初年度、野菜や米など併せて3万3.734トンが格付けされた有機農産物JAS規格と比較するとこれは大きな違いです。
畜産分野における初めての有機JAS規格であるにもかかわらずいまだ申請に時間がかかっていることは特筆すべき点といえます。ここには有機畜産のJAS規格が持つ農産物とは違った申請の難しさという点が絡んでいます。

 

1. 有機飼料の確保

まず、有機畜産を行う上で欠かせない有機飼料の確保が困難なことです。大きな問題の一つは、日本の国土条件として、飼料穀物を需要に見合うだけ生産することができない状況があります。農林水産省の食料自給表によると、現在、畜産用飼料の自給率はおよそ16%にすぎません。畜産用の飼料原料の大部分を輸入に頼っているわが国においては、有機畜産用飼料の原料を入手することはさらに困難なものとなることはいうまでもありません。
では、海外から日本の農場へ有機飼料を輸入する場合どうなるでしょうか。有機飼料についてもJAS規格が定められていることから、当然認定を取得しなくてはいけません。この際、輸送する間の有機性の確保、海外での有機飼料農場との契約等、国内で行うよりも多くの手間と労力がかかります。また、域内循環が、有機の一つのテーマであるという観点から、飼料を輸入するということに根本的な疑問を投げかける声もあります。

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