有機認証の品質と効率(作吉 むつ美)

この原稿は香港滞在中に書いている。知らない人のほうが多いだろうが、香港やシンガポールにも農地はある。決して多くはないが、その一部は有機栽培に取り組み、地元で注目されているのだ。香港にはまだ公的な有機認証基準がないため、民間の認定機関が自分たちの基準で有機認定している。彼らの検査員育成のために、今回で3度目になる講習を行ったところだ。滞在中、現役検査員と交流する機会があったのだが、いずこも検査員がもつ悩みは共通で、相棒のコスタリカからきた講師と苦笑いをした。

 

香港の認定機関では、現在農場の認定を中心に展開してきている。しかし、もともと農家の数や規模が小さいため、認定件数は限られている。となれば、検査員も他の仕事をするあいまに、月に1度か、あるいは年に10回ほどの検査しかすることができない。日程の調整がギリギリで、なかなかスキルを伸ばすことができないのである。ではなぜこれ以上の検査員が必要なのか?認定機関としては、講習会を開催することが普及につながるために実施しているが、一方では専任で検査をやってくれる人材を求めているからだ。他の仕事をしながら週末の検査をするというと、日程調整に限界があるのである。でも専任者がでてくれば、現在検査を行っている人たちは、ますます現場経験を得るチャンスを失うことになる。検査に必要なスキルは経験から得るものだけではないが、経験が大切なことはいうまでもない。そしてこれは日本の認証の現場でも、共通する問題である。

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