オーガニックコットンの現況(日比 暉)

4. オーガニックコットンと通常の綿花の違い

では、繊維として、オーガニックコットンは通常の綿花とどう違うのか。

通常の綿花生産には、大量の農薬が使われているが、繊維の中に含まれる残留農薬はどれほどあるのか。

結論から言えば、通常の綿花の残留農薬は、食品の許容値より低い数値で、人体に及ぼす影響はないと言われる。残留農薬という面から見ると、この両者には有意差はなく、両者の違いは、環境負荷の大きさにあり、物性の差違にあるのではない。〈注〉

〈注〉 綿繊維の残留農薬については、ドイツのBremen Cotton Exchange(ブレーメン綿花取引所)で長年にわたって実施されている。検査は、Hohenstein Research Institute(ホーヘンシュタイン研究所)に委託しているが、すでに20年以上続けている。ホルムアルデヒド、PCP(ペンタクロロフェノール)、Ph 値、重金属、落葉剤など、228種類の残留農薬の検査を行っている。その結果は、綿繊維に含まれる化学物質は、Eco-Tex 100基準の許容範囲の極微量しか検出されていない。

 

5. 認証の必要性とその方法

オーガニックコットンと通常の綿花とは、化学分析などで識別することはできないので、国際的に行われている方法は、第三者の認証機関の検査員が現地検査を行い生産過程をチェックして、認証するという方法である。

綿製品の場合、原料は農場で作られ、種まきから収穫まで6ヶ月から9ヶ月かかる。また製造工程としては、紡績、織編、染色、仕上げ加工、縫製という長い工程を経て、最終製品になる。商品企画から入れると、1年以上もかかって製品に完成するという品目もある。この長い工程は通常いくつかの離れた工場で行われているので、全工程を検査するということは簡単なことではない。
有機栽培については、米国、EU、インド、日本などで、それぞれ国が定める基準があり、認証機関が認証を行い、証明書を発行している。

一方、繊維製品の製造工程の認証基準については、民間ベースで策定され、有機農業と同じように認証機関により行われている。
製造工程の認証は、以前は民間ベースのばらばらの基準によって認証されていたが、それを統一して世界共通で同じ基準に基づいて認証を行うようにするため、世界有機繊維品基準がつくられた。

 

6. 世界有機繊維品基準(Global Organic Textiles Standard、略称GOTS)

2002年、下記の4つの組織が集まって、IWG(国際作業ルグープ)を構成して、それまでばらばらであった認証基準を一本化する作業を始め、2005年に基準が完成、実行に移された。

GOTSのIWG構成メンバー :

  • 日本オーガニックコットン協会(JOCA)(日本)
  • IVN(ドイツ)
  • Soil Association(英国)
  • Organic Trade Association(米国)

GOTS認証では、認可された認証機関が認証検査を行って、認証書(certificate)を発行する。有機農業や有機食品の認証方法と同じで、繊維の担当者が検査に当たる。現場を検査する検査員(inspector)と、本部にもう一人、検査員から送られてくる検査報告書を審査する監査員(auditor)の2名で、認証が行われる。

検査機関は、ISO 65に基づく監査(accreditation)を毎年受けなくてはならない。これは、認証検査機関として適正な機関であることを確認、認定するためである。 認証は、検査を行った適正な製造工程に対して、ライセンスを与えるという方法が取られている。1年間有効で、その期間に生産される製品は、GOTS認証の有機繊維製品として、表示をすることができる。

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