オーガニック・自然化粧品を取り巻く市場環境(手島大輔)

3.日本市場に存在する問題点 内外価格差

オーガニック・自然化粧品についてこの日本市場の存在する問題点として、内外価格差が挙げられる。内外価格差とは、海外市場での価格と日本市場での価格の乖離のことをいうが、オーガニック・自然化粧品については、海外現地価格の1.4倍、さらには2倍以上の価格にて日本市場で販売されている製品もあり、その価格差は大きくなっている。輸送費やその他経費、また日本の流通経路の多段階性という特性もあるが、国際化社会の進展の中、その他の消費財などの内外価格差については是正されてきている現状である。

海外貿易の歴史と過去の事例を紐解けば、海外で新たに作られた製品は「舶来品」として日本では珍重され高い価格で売買されてきた。現状、海外で新たに生まれ日本市場には珍しいオーガニック・自然化粧品は「舶来品」としてのステージにあると考えられるが、今後は日本の消費者に対しても海外市場と同等価格での販売という消費者への利益提供が望まれていくと考えられる。そして、インターネットの進展や海外旅行の普及で消費者も海外製品の現地価格をより簡単に知りうる状況、また個人輸入で現地価格にて購入できる時代である。また、多くの情報にアクセスでき、各製品に記載されている全成分をみれば製品の価値や価格の妥当性が分かるしっかりとした判断基準を持つ賢い消費者は、日本でも今後増え続けるであろう。今までのように、日本の消費者のあまり知らない珍しいもので、価格が高いものイコール良いもの、と認知させる図式は通用しなくなってきた。現状は、ビジネス規模が小さく小ロットでの買い付け、外注化により輸入販売コストが嵩んでいる企業なども、今後は高い品質とサービスを保ちながら企業努力から内外価格差を是正していくことが求められる。また、オーガニック・自然化粧品は栽培や生産に手間とコストのかかる植物原料を使用、保存などもコストのかかる原料を使用するなど大量生産・大量流通の一般化学製品に比べて価格の高いものになってしまう現実はあるが、その特性に甘んじず高い品質は保ちながら多くの一般的な化粧品やトイレタリー製品と同等の家計に負担をかけない価格での提供といった企業努力も行っていかなければならない。日々のマーケティング活動を行う中で、単なる現状仕入れコストへの自社利益のマークアップでの価格設定から、化粧品・トイレタリー製品としてのリーズナブルな価格での消費者への製品提供という企業努力を追及、消費者からの強い信頼と愛顧を勝ち取るブランドのみが生き残っていくであろう。

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