オーガニックコットンの国際認証と概要(山口 真奈美)

8.今なぜ認証が必要なのか、その意義と展望

認証の効果として、取得企業にとっては、第3者認証機関による審査・認証を受けることにより、製品のより確かな信頼性を確保していることを取引先や消費者にアピールすることが可能だということが挙げられる。さらに、管理体制の見直しや、従業員への教育、文書化されたマネジメントシステムを確立することで、より組織力が高まるという違った効果を生み出す例もある。

では、そもそも認証はなぜ必要なのか。誰もが自然や環境に配慮した製品づくりをしていれば、外部からの第3者認証は必要ないかもしれない。しかし、昨今の食品や再生紙偽装をはじめ、オーガニックとうたっていても100%なのか何パーセント含まれているのかの表記は厳密には縛られておらず、消費者がその表示を信じる以外方法がない。しかも消費者が生産地から加工される工場をすべて周り、トレーサビリティーの確認や工場や企業の状況を調べていくのはとても困難である。認証は、いわば消費者の代わりに審査員が公平に第3者の立場で調べ、証明していくものともいえるだろう。

企業が取引を開始するかの判断基準としても、海外では特に第3者の証明を求める傾向がある。性善説に基づいていれば必要がないと思われるシステムともいえるが、今この時代だからこそ安心・安全を伝える手段として認証があるのではなかろうか。いわば、認証は当然ながら取得すること自体が目的ではなく、外部へ信頼のおける活動をしていることを開示し、取引する製品について本当にオーガニックの製品であるということを胸を張って作り手が伝えていくための手段にすぎない。

日本では原材料をはじめ、多くは輸入に頼りながら私たちの生活が成り立っている。消費者の選択と、企業の社会に与える影響は計り知れない。たった一つの製品が、その認証製品を通じて、危険な農薬等を使用していないという安心・安全であること以上に、背景に広がる世界とその関係を見つめなおす必要があるだろう。もし、農場をはじめ働く人々の生活を脅かし、子供たちが学校に行けず働かされているとしたら。また過酷な労働を強いられていたり、農薬によって健康被害が出ていたとしたら。

環境・社会・経済のバランスを軸に、地球とその環境に目を向けながら、真剣に考え取り組んでいる認証取得企業の方々の、その素晴らしい活動を第3者認証機関という立場で証明のお手伝いをすることで、オーガニックコットンがさらに広がり、少しでも消費者の想いと行動が矛盾しないような社会へと繋がっていけば幸いである。

 

出典:BioFach Japan 2010 公式ガイドブック
執筆者:山口 真奈美

PROFILE:
株式会社FEM 代表取締役。株式会社Control Union Japan 代表取締役。
環境・CSRに関する研究・評価・教育及び関連事業の他、2006年からはオランダに本部をおく認証・審査機関Control Union Certificationsの日本支部も担い、森林やオーガニックコットン等の認証審査を手掛ける。2009年6月株式会社Control Union Japanを設立、代表取締役に就任。環境ビジネス総合研究所、他 NPO理事等も務める。経済学修士(環境経済学)・学術修士(環境科学)

株式会社 Control Union Japan URL: http://www.controlunion.jp/
株式会社 FEM URL: http://www.f-em.jp//

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