2000年、有機表示に関する有機JAS制度が制定された。同制度では、指定農林物資(畜産と酒類を除く農産物)の商品本体(容器)とパッケージ、取扱業者が関わる送り状には、有機JAS認証を取得していないと、たとえ、有機農業で作っていても「有機」や「オーガニック」とは表示できなくなった。いきなり表示制度から始まった日本のオーガニック政策。有機農業を広めるための有機農業推進法ができるのは2006年である。
MOA自然農法文化事業団が2010年に行った調査と推計によると、同時点で、有機農業を行っている農業者の中で、有機JAS認証を取得している人はおよそ4,000人。認証を受けないで有機農業を実践している農業者はその倍の8,000人という。
では、この8,000人は自分の生産物をどう表示(表現)しているのだろうか。前述のように、表示の範囲は商品本体(容器)とパッケージ、送り状に限定されている。なので、インターネットやチラシで「有機農業で生産した」や「有機農産物です」と表現することは許容されている(「有機農産物及び有機加工食品のJAS規格のQ&A」農林水産省消費・安全局表示・規格課、2014年1月 問24-8、73頁)。
しかし、許容されているとはいっても、「正々堂々と」表示できる環境にあるとはいえない。販売現場では行政指導や不当な干渉によって有機表現が抑制される場合があるし、また、消費者を惑わすことにもなりかねない。ここに、PGSによる「もう一つの有機認証」の道が開けるのである。
PGSは1970年代に日本で始まった、生産物を農家から消費者へ直接、信頼関係に基づいて届ける「提携」を原点の一つとするという。であるならば、PGSの日本への導入はなんら問題はないと思われる。むしろ、お馴染みのシステムといえる。
よく似た方式の、生産者と消費者が生産方式を確認し合い・納得し合うシステムとして消費者(組合員)が現地に赴き確認業務を行うパルシステム生協連合会の「公開確認会」がある。しかしこの場合、消費者参加ではあるものの、「農薬削減プログラム」にしたがって継続的な取組みの状況を確認するものなので、有機農業による生産を原則とするPGSとはいえない。
日本でのPGSの告知活動は主に日本有機農業研究会によって行われている。その一部の主なものをあげると以下の通り:
● 2005年 第15回IFOAM世界会議でのPGSを『土と健康』(05年12月号)に掲載
● 2010年URGENCIの分科会「提携とPGS」の報告記事、及びIFOAMの文書の訳文を『土と健康』10年8・9月号に掲載
● 2015年「参加型保証システム(PGS)の仕組みと現状」が木香書房「自然と農業」No.76:に掲載
→ GONでも、この内容を簡単にまとめた記事を掲載した。
● 2015年 IFOAM「参加型保証システム(PGS)ガイドライン」を公開
このように、PGSについての周知は広がってきてはいるが、日本では、まだ実施段階に入っているPGS事例はない。しかし、今年に入ってGONでも紹介したことがあることからか、PGSに関する問い合わせがGONにも届いている。また、一般社団法人生き物認証推進協会はこの9月からPGS実施に関する講習会を始めた。こうして、日本でもPGSへの動きが現実味を帯びてきているといえる。
★ PGSに関するIFOAMのガイドライン日本語版が発行されました!
『参加型保証システム(PGS)ガイドライン―どのようにしてPGSをつくり、機能させるか』
A4判 34ページ 日本語版 日本有機農業研究会(IFOAMの許可を得て、日本有機農業研究会が翻訳 原書2008年、日本語版2015年8月)
※IFOAMウェブサイト、日本有機農業研究会ウェブサイトからダウンロード可。
簡易印刷冊子を希望の方は、送料込み600円。希望者は、日本有機農業研究会事務局まで。
TEL 03-3818-3078 / FAX 03-3818-3417 E-mail :info@joaa.net
参考資料:日本有機農業研究会の「土と健康」掲載の様々な論文・記事ならびに國學院大學経済学部教授久保田裕子氏が上記誌およびその他の専門誌で発表された論文・記事、一般社団法人生き物認証推進協会代表 徳江倫明氏作成の原稿を参考にさせていただきました。