2016年5月28日に第一回AWFC(アニマル・ウェルフェア・フード・コミュニティ)Japan設立総会ならびに「日本におけるアニマルウェルフェア畜産の成果と未来」と題した設立記念シンポジウムが東京都武蔵野市の日本獣医生命科学大学新館にて開催された。

今年11月開催されるオーガニックライフスタイルEXPO」ではマニマルウェルフェアのテーマ展示が開催されることから、注目のイベントである。

家畜は物ではない-アニマルウェルフェア(家畜福祉)の定義

家畜(動物)は、「単なる農産物ではなく、感受性のある生命存在である」から、ストレスによって飼育環境下の病原菌に対する免疫力を失い、感染し、病気になる。ゆえに、飼育者は、家畜をストレスから解放し、行動要求が満たされた健康的で福祉レベルの高い生活をおくれるように飼育する責任がある。

「アニマルウェルフェア(家畜福祉)」とは、「人も家畜も満たされて生きること」。英語のWel-fare(福祉)の語源的意味は、人間も動物も「満たされて(Wel)生きている(fare)」 と捉えられる。

したがって、家畜のアニマルウェルフェアとは、家畜が最終的な死を迎えるまでの飼育過程において、ストレスから自由で、行動要求が満たされた健康的な生活ができる状態にあること。同時に、それによって人も家畜から癒しを受けるなど、家畜と人が相互に満ち足りた生活を与え合っている状態と定義される。

アニマルウェルフェア畜産の理念

アニマルウェルフェア畜産(家畜福祉畜産)とは、家畜をそのような「行動要求満足度の高い生活状態で飼育する」生産システム。そして、人も家畜から安全で質の高い「ウェルフェア食品」と精神的な「癒し」をも与えられるという、人と家畜とが相互依存する「ウェルフェア共生システム」と定義することができる。

しかも、「ウェルフェア共生システム」で生産される、ウェルフェア商品の価値を実現するためには、生産段階に従事する人たちだけでなく、流通業、食品加工業、レストラン等の飲食業に従事する人たちと最終消費者など、多様な人々が、アニマルウェルフェアを重視するライフスタイルをめざして、生産活動と生活活動を結びつけるあらたな社会的ネットワークを形成していくことが不可欠である。今や、人も動物も満たされて生きる『ウェルフェアフードの時代』が始まっているのである。

AWFC設立の趣旨

欧米などの畜産先進国は、家畜の行動の自由を閉じ込め、生産性と効率性の向上を目的としてきた工場的畜産からアニマルウェルフェア畜産への転換をすすめている。また、世界動物保健機関OIEも2005年から世界家畜福祉基準を策定している。

アニマルウェルフェア畜産で飼育された健康な家畜から生産される畜産食品は、安全で人の健康に寄与する「高福祉品質」という付加価値をもっている。

この食品価値を認知する消費者へ供給するチェーンの開発及び促進事業を実行し、畜産食品市場にアニマルウェルフェア畜産食品を普及することを事業原則とし、家畜福祉食品の生産・加工・流通を担う実業者の共同体がAWFC(アニマル・ウェルフェア・フード・コミュニティ)JAPANである。

設立発起人は次の通り:(50 音順、所属、敬称略)

磯沼正徳 (磯沼ミルクファーム東京都)
高橋希望 (ホープフルピッグ東京都)
中嶋千里 (ぶぅふぅうぅ農園山梨県)
平林英明 (エルパソ北海道)
向山一輝・茂徳 (黒富士農場山梨県)
吉岡幸彦 (吉実園東京都)

世話人 松 木 洋 一(日本獣医生命科学大名誉教授)

AWFCの基本原則

AWFCは、世界の家畜福祉の原則となっている『5つの自由』の実現を基本原則とする。

①「飢えと渇きからの自由」(健康と活力の為に必要な新鮮な水と飼料の給与)
②「不快からの自由」(畜舎や快適な休息場などの適切な飼育環境の整備)
③「痛み、傷、病気からの自由」(予防あるいは救急診察および救急処置)
④「正常行動発現の自由」(十分な空間、適切な施設、同種の仲間の存在)
⑤「恐怖や悲しみからの自由」(心理的な苦しみを避ける飼育環境の確保及び適切な待遇)

 

AWFCの活動目標

家畜の行動の自由を大切にするアニマルウェルフェア畜産によって、「健康な畜産から安全で品質のよい食品を供給する」事業を実践し、家畜とともに生きることによって「癒しを受ける」ライフスタイルを確立する。

アニマルウェルフェア食品の供給チェーンシステムを農場、食品企業、流通業、外食業、消費者と協働して開発する。また、新規ビジネス事業を会員相互の協働によって開発し、我が国のアニマルウェルフェア畜産の促進に寄与する。

 

生産者の成果発表

午後からAWFC会員によるアニマルウェルフェア畜産の成果が発表された。
発表者は下記の通り(敬称略)。各生産者の特色や成果はウェブサイトをご参照ください:

酪農部門
新村浩隆 (北海道 しんむら牧場
村上勇治 (北海道 あすなろファーミング
中洞 正 (岩手県 中洞牧場
磯沼正徳 (東京都 磯沼ミルクファーム

肉牛部門
上田金穂 (北海道 北十勝ファーム
西川奈緒子(北海道 駒谷様似牧場
山口力男 (熊本県 阿蘇百姓村)
周年放牧、水場を整える知恵、景観の価値などについて発表
宿泊を受け入れている。 熊本日日新聞社インタビュー

養豚部門
中嶋千里 (山梨県 ぶぅふぅうぅ農園
平林英明 (北海道 ランチョ・エルパソ
高橋希望 (東京都 ホープフルピッグ
吉岡幸彦 (東京都 吉実園)
松下憲司 (神奈川県 中津ミート
氏本長一 (山口県 氏本農園

採卵鶏部門
向山一輝 (山梨県 黒富士農場
高草木里香(山梨県 白州郷牧場
池田 司 (高知県 ニワトリノニワ

肉鶏部門
秋川 正 (山口県 秋川牧園
田仲義男 (茨城県 内外食品農場