自然と農業誌からみた日本の有機農業の展望(自然と農業編集部)

近年、日本の有機農業は多様な問題を含みながら発展しているが、ここでは自然と農業誌で近年訪問した取材先を振りかえりながら、今後の日本における有機農業への展望を考えてみたい。

 
世界的な規模で発展をみせている有機農業は、古くは一九二〇年代、ドイツのR・シュタイナーのバイオダイナミック農法まで遡ることができるが、今日的な意味合いを含む有機農業は、一九七〇年代から「運動」として始まったと考えられている。日本でも、一楽照雄氏らが一九七一年に結成した有機農業研究会がその草分け的な存在として知られ、現在もその活動は思想的、技術的にも日本の有機農業に影響を与えている。

 
これまでの日本の有機農業は、「産消提携」という生産者と消費者がともに支えあう独特の流通形態で発展してきた。千葉県の三芳村生産グループ(自然と農業二五号で訪問)はその典型的な形で、三〇年の活動の中で産消提携を基本とし、常に消費する側との直接の接点を持ち、「顔のみえる」関係の中で地道な活動を続けてきた。

 
しかし、消費スタイルの変化や世界の流れを汲んだ行政指導、そして有機農産物が一般市場に登場するにつれてその形は変化しつつある。商品の差別化を意識した、「産業」としての有機農業が全面に出てくるようになってきた。らでぃっしゅぼーや(同2号で訪問)や大地を守る会(同5号で訪問)に代表される宅配システムにより有機農産物を広域に流通させたり、東京の太田市場においても東京青果㈱(同24号で訪問)が個性園芸事業部を組織し、卸業者が一部有機農産物を取り扱うようにもなった。生産分野でも群馬県昭和村の㈱野菜くらぶ(同24号で訪問)のように生産者の組織として法人化され、2001年から施行されている有機JAS認証の取得も念頭においた生産・販売が行われているところもある。加えて、東京都八王子市でアイガモを利用した有機米や自然農法による野菜の生産を行う澤井農場(同26号で訪問)では、宅配や自然食品店のほかに地域のスーパーなど個別契約をし、独自の流通形態を持つところもある。産消提携や量販市場だけでない流通にも、有機農業の「産業」としての発展をみることができる。

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