畜産分野におけるオーガニックの課題と将来性(自然と農業編集部)

オーガニックビーフやオーガニックチキン、オーガニックポークが来年初頭にも、スーパーでお目見えすることになりそうです。8月26日に行われたJAS調査会総会で、有機畜産のJAS規格案が審議、了承された結果、現在農林水産省において法制化に向けての準備が進んでいるからです。早ければ今年の11月中にも、法が施行されることになります。
この規格の制定によって、牛、馬、めん羊、山羊、豚、鶏、うずら、あひる、かもについて、有機またはオーガニックと表示した商品を販売することが可能となります。
今回は、日本国内の有機畜産における課題とその将来性についてレポートします。

 

1.有機飼料の確保

有機畜産を行う上で欠かせないものが、有機飼料です。有機飼料は有機生産されたものを主な原材料とすることが、基本的に義務付けられています。
ところが、この有機飼料の確保には、いくつかの問題があり、その入手および確保は難しいものとなっています。
大きな問題の一つは、日本の国土条件として、農地が狭い上、平坦部が少なく、飼料穀物などを栽培することにハンディキャップを背負っているということです。
飼料穀物を需要に見合うだけ生産することができない状況にあるわけです。農林水産省の食料自給表によると、現在、畜産用飼料の自給率はおよそ16%にすぎません。畜産用の飼料原料の大部分を輸入に頼っているわが国においては、有機畜産用飼料の原料を入手することはさらに困難なものとなることはいうまでもありません。
その結果、有機飼料に関しても海外からの輸入に頼らざるを得ない状況にあります。
その際問題となるのは、海外から日本の農場へ輸送する間の有機性の確保です。海外での有機飼料農場との契約や、流通、倉庫での保管、運搬の各段階において、慣行の飼料と有機飼料との、混合を防ぐための管理は容易ではありません。
また、域内循環が、有機の一つのテーマであるという観点から、飼料を輸入するということに根本的な疑問を投げかける声もあります。
今後は、国内での有機飼料自給率の向上が一つの鍵となりそうです。一部では、この有機飼料自給率向上のための試みとして、国産飼料米の生産等が進められていますが、十分とはいえないのが現状のようです。

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