検査員からみえるオーガニック市場このごろ(作吉 むつ美)

日本におけるオーガニック食品の第三者認証は、1989年にさかのぼる。当時欧米に輸出を手がけていた商社が、必要に迫られて米国の認証機関に申請したのが始まりだ。それから18年、日本でのオーガニック認証は、欧米以上の加速度をつけて展開してきた。

 

先に農水省が発表した「品質表示実施状況の調査結果」では、10,877店舗の調査対象に対し、5,937店舗と半数以上の店舗で「有機商品」が販売されていると報告されている。1980年代のデータがないので比較はできないが、一消費者として店舗での品揃えをみていても選択肢が大きく広がっていると感じている。第三者認証がスタートした時期と比べると、雲泥の差だ。

 

また、同調査結果では、販売店での表示等違反事例は1%程度であることも報告されている。8月に開催された農水省による登録認定機関の説明会では、監視班から生産側の違反事例などについての報告があったが、その件数もわずか。総じて、日本の有機JAS認証制度の精度は、かなり高いものと評価できる。今年もいくつかの偽装事件が食品業界を賑わしているが、消費者にとって信頼できる有機JASマークだと胸をはっていえるのではないだろうか。

 

それにも関わらず、認証の現場にいると、国内での有機JAS認証は停滞した印象をぬぐえない。一言でいえば“元気がない”のだ。ここ数年、“差別化としてのオーガニック”であった時代は過ぎ、低安定期(?)に入った。その停滞したムードを打ち破るきかっけに有機畜産が期待されたが、認証が任意であること、有機飼料の確保が困難であるなどの理由から、どうもぱっとしない。水面下でプロジェクトがすすんでいるような噂も聞くが、バイオ燃料市場の活性化は、これにブレーキをかけているとも聞く。

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