有機の卵に見るオーガニック畜産物の行方(自然と農業編集部)

日本で有機農産物と表示できるのは、2001年4月から有機JAS規格で定められた基準を満たし、オーガニック検査員による検査を受け、第三者機関である認定機関から有機認定を取得した農産物だけとなりました。そして有機農産物のJAS制度公示から四年後の2005年、畜産物に関する有機JAS制度も公示され畜産物についても「有機」の表示規準が制定されました。
この規格の制定によって、牛、馬、めん羊、山羊、豚、鶏、うずら、あひる、かもについて、有機またはオーガニックと表示した商品を販売することが可能となっていますが、公示から三年を経過した現在でも国内産の有機畜産物の市場流通はまったくといっていいほどありませんでした。
ここには畜産物が持つ生産段階における固有の難しさが絡んでいるのですが、その困難を乗り越えて最近、有機JAS規格を取得した卵が市場に流通し始めました。本稿では有機畜産のJAS取得にいたる諸課題についてこの有機卵を中心にみながら有機畜産の今後を展望します。

 

1. 有機飼料の確保

有機畜産を行う上で欠かせないものが、有機飼料です。鶏であれば飼料原料の多くはトウモロコシと大豆からなっていますが、その飼料原料について有機生産されたものを主とすることが義務付けられています。ですが、この有機飼料は、その入手および確保は非常に難しいものとなっています。
大きな問題の一つは、国内での原料入手の困難さにあります。山がちな日本の国土条件は作物を効率的に生産する点で不向きで飼料穀物を需要に見合うだけ生産することはなかなかできません。農林水産省が毎年発表している食料自給表によると、現在、畜産用飼料の自給率はおよそ16%にすぎず、畜産用の飼料原料の大部分は輸入に頼っている現状が分かります。こうした状況にあって国内でさらに有機畜産用穀物を入手するとなると非常に困難なものになることはいうまでもありません。

 

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