検査員からみえるオーガニック市場このごろ(作吉 むつ美)

こうした現象は、1990年代中頃に、食品業界でオーガニックブームが起きた時期に少し似ている。ただ、その頃と大きく違うのは、“第三者認証”そのものが、さほど珍しくなくなっているという点である。繊維製品もボディケア製品も、最終消費者は、オーガニック食品の消費者層と重なる。このためか、顧客(販売店など)から、製品に対しての第三者認証を要求する場面も見受けられる。これからは、製品までオーガニック認証されたものが増加することは間違いない。

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さて、そうした新しい分野におけるオーガニック認証を考えると、日本国内では“食”以上に生産基盤がないことに気づく。繊維製品、ボディケア製品は、その原料、または加工のほとんどを海外に頼っている。そのためか、繊維製品やボディケア製品の製造者やアパレル、流通業者などの関係者は、日本の有機農業関係者との交流はあまり多くないようだ。もともと日本での生産基盤が脆弱なもの、または全くないものが原料であることから、無理な側面もある。逆に、多くの有機農業関係者は、繊維だの化粧品は他人事としか考えていないかにみえる。実利的なことを考えればやむを得ない面もあるが、互いになんらかの交流があれば、風土に根ざした製品開発ができる機会も生まれるのではないものかと、あれこれ想像している。
認証に携わる者、生産や流通に携わる者は、ともすれば、自分の責任範囲、自身の商売にのみ問題を限定しがちである。しかし、視野を広げて、つなげる手は結んだほうがいい。私自身の大きな課題である。

 

出典:BioFach Japan 2007 公式ガイドブック
執筆者:作吉 むつ美

PROFILE:
オーガニック検査員
1993年、IOIA(International Organic Inspectors Association)の検査員研修を受けたのち、日本・アジアを中心に検査活動を開始。1997年、日本オーガニック検査員協会設立。検査活動の傍ら、検査員育成、事業者向け研修などにも力をいれて活動。近年は、アジア各国での検査員研修での講師活動も始める。日本オーガニック検査員協会参与。JOIA/IOIA公認講師。

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