話を元に戻そう。検査員は毎日検査にでかける訳ではない。表1は認定事業者数の推移である。(注: 現在、加工食品の製造業者は、生産行程管理者とよぶが、わかりやすくするために製造業者のままの表記にしている。)仮に推定活動検査員数500で頭割りにしても、年間17件ということは、月に1〜2件ペース。いうまでもなくこれでは仕事にはならない。 私個人の経験でいえは、ピーク時は、年に100以上の検査を担当したときもあった。しかしここ数年は、60〜80件程度でいっぱいである。検査員仲間には、年間120件以上こなす強者もいるが、たぶん例外的な存在である。神経を使う有機の検査をそれだけこなせる人はざらにいないだろう。しかし、北米の検査員など年間200件はこなすという人もいる。同じような作物で地域も固まっている農家を1件ずつと数えれば、それも可能かもしれない。また、インドのように、1プロジェクトで農家数が1000軒以上という例もあるのだから、件数だけで比較しても、あまり意味はない。いずれにせよ、どれだけこなせるかは、どんな案件を担当するかで違う。また、認証機関によって、検査員にまかせる範囲が違うので、それによっても業務量は異なる。いかに効果的で効率の良い検査サービスができるか。これは常に頭にこびりついて離れない課題である。(共に考えたいという方、JOIAにいつでもご連絡ください)
さて、では二つめのテーマに移ろう。
「今、有機って伸びているんですか?」
この答えは、YES。特に認証に関わっていれば、実際の物量ではなく、認証申請件数の動きが、伸びているかどうかの物差しになる。しかし、表2の格付実績量をみると、アイテムにより伸びているものと、減じているものがある。総合的にみると伸びていると言えるが、国内での生産量はやや落ち気味である。ただ興味深いのは、生産量そのものが落ちていても、国内総生産のうちで有機の締める割合が伸びている点である。今後、国内の農業生産の現場では有機であることが意味深くなっていくのかもしれない。また、平成20年からの集計にあがってきた有機畜産物が、今後どのような変化をとげるのかも注目したい。
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