オーガニック化粧品入門(手島 大輔)

最近多くの方から「オーガニック化粧品とは何ですか?」、「オーガニック化粧品とは100%オーガニックなのでしょうか?」などの質問をいただくことが多くなりました。近年日本の化粧品市場を賑わしているオーガニック化粧品ですが、実際の消費者、また販売に従事している人達にとってもその定義は曖昧かつ誤解が多いことも事実です。この項をかりてオーガニック化粧品について簡単にご紹介できればと思います。

 

1. オーガニック化粧品が生まれた背景は?

オーガニック化粧品の歴史は、植物を用いた美容法ということでははるか昔に遡ります。クレオパトラはバラの精油を用いたといわれ、ルネサンスを代表する女性ミラノ王国のカテリーナ・スフォルツァ伯爵夫人の美容本には各種の植物エキスやオイルを用いた美容法が紹介されと、おもに貴族の間で化粧品は用いられてきました。

近代のオーガニック化粧品については1920年代のドイツがひとつの起点となります。当時化学肥料を多用した近代農業が推進されたことによって土壌が悪化し、古来農業への回帰が叫ばれた時期がありました。この時代にドイツには環境や食物についての安全性に目が向けられる素地ができたといって良いでしょう。当時の学者R.シュタイナーはバイオダイナミック農法を唱えて有機農業を推進し、彼は後にスイスにて化粧品会社であるヴェレダ社を起しています。

その後、1960年〜1970年代のヒッピーカルチャーを経て1980年代以降にヨーロッパを襲った狂牛病や残留放射能、ダイオキシン問題が消費者の食や身につけるものへの安全性についての意識を高める背景となりました。当時からヨーロッパを中心に多くの自然化粧品ブランドの誕生が見られるようになり、そして2000年代に入ってからは世界の環境志向と相まってよりオーガニック化粧品が注目される市場環境となります。多くの消費者が、「オーガニック」というキーワードや訴求、スペックに良い反応を見せ始めたのです。

 

2. 100%オーガニックってあるの?

オーガニック化粧品を定義するものに、その原料があげられます。つまり、有機(オーガニック)栽培された植物を用いている化粧品ということです。各化粧品メーカーは、オーガニック化粧品として各製品にオーガニック栽培による植物エキスやオイルなどを配合しています。

さて「オーガニック100%の化粧品」なるものはあるのでしょうか?一部存在しますが、それは極めて少ないといえます。「オーガニック栽培の植物原料100%で出来た化粧品」といえるのは、植物油のみのマッサージオイルや油脂のみによるバーム等に限られてしまいます。なぜならば、それ以外のアイテムには何らかの化学物質が含まれているから。理由は簡単で、水分の多い植物エキス状のものは合成保存料やアルコール(エタノール)を入れない限りは常温流通・保存では野菜ジュースと同様に腐ってしまい、シャンプーなどは合成界面活性剤や石鹸などが含まれていなければ十分に泡が立たないからなど、化粧品としての機能を求めると植物の汁や油のみでは製品として成り立たないからです。また、原料のヤシ油やオリーブ油などの植物油が仮にオーガニック認定付きのものであっても、その油を合成界面活性剤や石鹸に化学変化させたものをオーガニック100%と呼ぶかどうかはグレーな部分といえます。

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