5. 生物多様性への取り組み
2010年は国際生物多様性年であることをご存知でしょうか。かつてないスピードで進行している生物多様性の喪失を食い止めるため、国連環境計画(UNEP)などでは様々なイベントが企画されています。そして何よりも、2010年10月は日本がホスト国となり、名古屋でCOP10(生物多様性条約第10回締約国会議)が開催されることもあり、政府・企業・NGO/NPOも含め、いかに生物多様性に取り組むかがホットな話題となっています。 私たちの生活を支える必需品たち。すべてはこの生物多様性に依存し、恩恵を受けて成り立っています。しかし、目先のことや経済のみを重点においた活動は多様性を破壊しかねません。この多様性を維持するために、生物多様性の価値を価格に換算し、経済の観点から保全への取り組みをする動きがあります。IUCN(国際自然保護連合)などはその方法を1.Direct Payments (直接支払い)、2.Tradable permits(取引可能な許可証)、3.Certification(認証制度)と整理しています。
また国連では、「グローバル・コンパクト」という10原則を示し、企業に「人権、労働基準、環境、腐敗防止に関して、国際的に認められた規範を支持し、実践するよう要請」しています。
さらにISOでは企業ばかりでなく、CSRについて、Cを抜いて「SR」とし、企業のみならず政府や公共団体、非営利団体も社会的責任の対象として定義しており、今やすべての組織や人々が共に考え行動する時がきていると言えるのではないでしょうか。
6. あなたの持つ基準と価値観に託された未来
あなたが生まれた時と現在を比較して、環境はどのような変化があったでしょうか。自然や絶滅に瀕する動植物の環境は改善されているでしょうか。そして消費のあり方や人々の価値観も少しずつ変化をしてきたと思います。
これから先、10年後20年後と、今の赤ちゃんや子どもたちが成長し大人になった時、世界の状況はどのような変化を遂げているのでしょうか。暖かな食卓を囲みながら大切な人と過ごす、学習の機会が世界中の子どもたちにある、戦争や紛争のない、環境破壊もされていない、そんな未来で幸福に暮らしているのでしょうか。
未来の話をする時、研究者の中にはとても悲観的な考えを持たれる方もいます。環境問題など知れば知るほど、待ったなしの現実を突きつけられてしまうからかもしれません。
世界には選択の余地なく日々生きることに精一杯の人々がいます。負のスパイラルから逃れられず、助けを求めている人や、人間の手によって破壊される自然や行き場を失い絶滅へ近づきつつある動植物がいます。
地球と私たちの距離は絶妙なバランスの上に成り立っています。今この時代に生まれ、そして日本という国で生まれた以上、私たちがしなくてはならない、そして自分なりの選択の基準を持ちながら、今こそ新たな価値観を創造し行動する時なのだと思います。その本物の価値を見極めながら、信頼ある、価値を見出せる企業を選択し、企業も選択される素晴らしい企業であり続けるために、環境・社会的活動も本業に入れながら、持続可能な社会と素敵な未来を共に創造していけたらと思います。
出典:BioFach Japan 2010 公式ガイドブック
執筆者:山口 真奈美
PROFILE:
株式会社FEM 代表取締役。株式会社Control Union Japan 代表取締役。
環境・CSRに関する研究・評価・教育及び関連事業の他、2006年からはオランダに本部をおく認証・審査機関Control Union Certificationsの日本支部も担い、森林やオーガニックコットン等の認証審査を手掛ける。2009年6月株式会社Control Union Japanを設立、代表取締役に就任。環境ビジネス総合研究所、他 NPO理事等も務める。経済学修士(環境経済学)・学術修士(環境科学)
株式会社 Control Union Japan URL: http://www.controlunion.jp/
株式会社 FEM URL: http://www.f-em.jp//
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