2015年3月20日(金)、創設から20年となる有機JAS登録認定機関、NPO法人日本オーガニック&ナチュラルフード協会(JONA)の定時総会が開催され、15:30から、イオントップバリュ株式会社 食品H&BC商品本部 規格基準仕様管理チーム・マネージャーの植原 千之 氏を講師に迎え、『オーガニックマーケット拡大への期待』というタイトルで講演会が開催された。
ご存知の通り、業界最大手のイオンは親環境商品を「グリーンアイ トップバリュ」というプライベートブランドで販売している。昨年10月、GONのニュースでもご紹介したとおり「イオン、有機食品PBを倍増 15年度200億円目指す」というニュースが業界の注目を集めた。そのイオンが日本のオーガニック市場拡大にどう取り組むのかを聞くために講演会に参加した。
まず、アメリカやヨーロッパのスーパーマーケットでオーガニック食品がどのように展開しているのか、300種以上のメニューを提供するスイスのオーガニックレストランの様子も含め、数多くの画像を使って紹介された。
・ヨーロッパは環境意識に、アメリカは個人の健康意識に訴求:アメリカのオーガニックのキーワードは「ヘルシー&デリシャス(おいしい)」
・あるアメリカのスーパーでは「本日は129のオーガニック商品があります」と表示
・グリーンのカードやO(オー)マークでオーガニック商品への注意を喚起する
・農産物だけでなく畜産品、惣菜、家庭菜園用のオーガニックの種まで販売されるなど、オーガニック食品があらゆる品目に広がっている。陳列商品全体がオーガニックというところもあり、同種の商品を比較できる品揃えとなっている
・セール品も出て、価格は今や安くなり、ディスカウンターまでが扱うようになっている。
このように、欧米の進化は目覚しく、オーガニックはもはや当たり前になっているのが現状である。
これからイオンはどうするか
イオンは、1993年にグリーンアイを立ち上げたが、これは「お客様を原点に平和を追及し、地域に貢献しながら人間を尊重する」というイオンの基本理念を商品として実現し、商品を通して健康な社会、健康な地球、健康な人という目標に貢献していきたいというもの。自由と安全が担保され心身ともに健やかな人という目標のためにオーガニック商品に取り組んでいるのである。
イオンが来店客調査したところ「有機商品の拡大希望」が50%超を占めた。その一方で、不満に関する調査では(複数回答)、値ごろが少ないが65%、品揃え不足が12%となった。消費者側からすると価格が高く、手が届かない現状がみてとれ、売り手側からすると、取り扱う品数や取扱店が増やせないという状態となっている。
すなわち、消費者のオーガニックへの期待は高いが、産業として未熟で、非効率、高コストというのが日本のオーガニックの現状である。OTA(オーガニックトレードアソシエーション)がまとめたアメリカ有機市場の推移のグラフで見ると、アメリカのちょうど12、3年前の状況という感じである。
店舗店頭調査によると、価格をユニットプライスで比較した場合、全般的に、日本の通常の食品は同じ種類のアメリカの有機食品と同じくらいの値段で、日本の有機食品は通常商品のジャムやコーンフレークでおよそ2倍、エクストラバージンオリーブオイルで4.4倍、トマト&バジルドレッシングで6.6倍など、高く、消費者が気軽に手が出せないことがわかる。
アメリカはこの12、3年間にオーガニック市場を倍増させたが、日本がそうするためには、生産、原料調達、製造、小売、さらには消費者までもカバーする情報が有機的にリンクする仕組みを作り上げる必要があると思われる。そのヒントが、先にあげたアメリカのオーガニックを振興する機関であるOTAのウェブサイトにある。ここでは、消費者への啓蒙情報としてオーガニックの健康情報が出典元を含め例示されているだけでなく、オーガニックビジネス関係者が必要とする情報や求める分野の業者を検索すことができるようデータが網羅されているので、業者は情報収集の時間や無駄な作業を省くことができ、専門事業分野に注力することができる。このような仕組みを、日本の農業・産業政策と歩調を合わせ、日本に合った形で構築されることが求められている。
さらに、アメリカで発行された報告書をもとに世界に目を向ければ、グローバルなオーガニック食品&飲料市場は2014年から2020年にかけて年率15.7%で成長し、2020年までに2114億ドルに達する見込みという(およそ25兆3500億円)。最も成長の早い中国では食品安全への懸念から予想成長率は2014年~2020年で29.4%となる。すなわち、アジア太平洋のオーガニック食品&飲料市場は世界でも最速の成長が見込まれ、予測成長年率は2014年~2020年で28.5%に達する。
これらのことを勘案すれば、アジアで日本は戦略的に先手を打つ必要がある。そのためには1社の努力だけでは不可能で、業界各社が連携して専門物流システムを共有するなど、日本全体で消費者視点に立脚したオーガニックマーケットが拡大できるような仕組みを早急に構築することが求められている。
発表後の質疑応答で、植原氏は、アメリカのオーガニックのキーワード「ヘルシー&デリシャス」のような、誰もがオーガニックの良さをよく認識できる合言葉、日本全体で共有できる統一の合言葉を考えましょうと提案された。
また、生鮮農産物に対するイオンの戦略に対する質問では、農産物は、生産から販売まで地域で完結させるのが難しい。加工品原料に絞って、地域と連携して作っていくことを考えているとのことである。
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