ドイツオーガニック業界の歩みと今後の動向

3)ドイツオーガニック業界の今後

量販店を巻き込むことにより、オーガニック市場全体の拡大に成功したドイツオーガニック業界ですが、2009年は折からの経済危機もあり、オーガニック市場の成長率は鈍化しました。かつてのような高い成長率が見込めない中、新規参入者が増えることで競争が激化し、競合他社との明らかな違いを打ち出すことが難しくなってきています。しかし、このように厳しい状況の中でも、独自のビジネスモデルを構築する注目すべき動きがあります。

ドイツのオーガニックスーパーや、個人経営のオーガニックショップで必ず目にするのがラプンツェル社の商品です。ミューズリーやトマトソース、チョコレートを始めとする450種類以上もの商品を、ドイツ国内の約4,000の販売店に提供しています。通常、販売店は複数多数のメーカーから商品を仕入れているため、特定メーカーのオーガニック商品だけを優先的に取り扱う事は考えられません。ラプンツェル社では、敷地内に研修施設を設置し、販売店の営業員に自社商品をよく知ってもらうための勉強会を定期的に開催しています。店員が商品に関する情報をたくさん持っている程、店頭で商品を勧めやすいはずだとするこの考えは見事に的中しました。販売店に多品種の商品を卸すだけでなく、積極的に販売店を支援する事で、売り上げ拡大に成功したのです。

また同社は、1988年から途上国での生産をサポートしていますが、HANDINHANDというフェアトレードとエコロジカルな農業を目的とするプロジェクトを積極的に推進していることでも有名です。現地で栽培の指導にあたるだけでなく、生産者の村に灌漑設備や太陽光発電、学校や集会所を設立することで、生産者との友好的な関係を築き、安全な原材料を提供いただけるよう努めています。ドイツの消費者の87%がオーガニック製品の購入動機を、現地生産にあたる人々を支援するためと回答していることから、フェアトレードへの取り組みを更なる付加価値として消費者に認識してもらおうとする選択は理に適っているといえます。フェアトレードへの取り組みには当然ながら資金やスタッフが必要で、参加したくても全ての企業が取り組めるわけではありませんが、長期的に安定した資材調達関係が得られるといった大きなメリットを企業にもたらしてくれます。

ラプンツェル社がBiofachに出展しなくなってから久しくなりますが、将来を見据えて何を実現すべきかという要件を定義し、それに資本を集中し、着実に事業運営に携わっている姿は大いに参考になります。

 

 

執筆者:浅野・レッケブッシュ 経緯子

プロフィール
ニュルンベルグ大学経営学部在学時より国際見本市、ドイツ企業や日本企業の商談通訳に従事。現在は、国際見本市に出展する企業のサポートやコーディネーター業務を中心に活動。

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