千葉県木更津市がリードする「オーガニックシティ」というまちづくりの挑戦

2015年9月、国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030 アジェンダ」に記載された2016年から2030年までの国際目標「SDGs」。アジェンダの実行は難しいものですが、アメリカやEUでは、すでにオーガニックやスローライフを取り入れている地域もあります。

アジアでは、2017年にAsean Organic Federationも設立され(参考:タイ グリーンネット)、今後はより持続可能な理念やライフスタイルとしてのオーガニックに注目が集まりそう。

日本では、オーガニックライフスタイルEXPOに、第一回から参加している地方自治体があります。それが千葉県・木更津市。2016年に「木更津市人と自然が調和した持続可能なまちづくりの推進に関する条例」(通称「オーガニックなまちづくり条例」)が施行されました。

 

木更津市がオーガニックなまちづくりを目指すことになったきっかけや具体的な取り組みなど、木更津市企画部企画課オーガニックシティ推進室の島村領一(しまむらりょういち)さんへお話をうかがってみました。


木更津市企画部企画課オーガニックシティ推進室 島村領一氏

 

木更津の自然を生かそう! 木更津市長の後押しで実現

どんな経緯で木更津市がオーガニックシティを目指すことになったのでしょうか。

「市長が、これから持続可能な社会にするためにどうしたら良いのか、いろんな分野で活躍されている方々を招いて懇談会を始めました。その中でGOTS(Global Organic Textile Standard)地域代表、IFORM Asia 理事を兼務する木更津市在住の三好智子さんなどと話を進めるうちに、市長が考える、市民がつながりを持って有機的な町づくりをする理念として、『オーガニック』という言葉が一番しっくりきたんです」

持続可能な未来を創るため、一人ひとりが地域、社会、環境などに配慮し、主体的に行動すること、という考え方とオーガニックが市長の中でひとつになりました。

木更津市長 渡辺芳邦氏

「木更津市全体で議論しながら考えていこうと、産官学連携で協議会をつくりました。コンセプトを構築後、市へ提言を行い、条例化しました。地元を愛している市民、企業、教育機関、メディアなどを巻き込んで、まちづくりの旗印を掲げました!」

都心から近く自然豊かな木更津市

近隣市の沿岸は大きな工業地帯に囲まれています。木更津市はさまざまな要因により、工業地帯とならず、代わりに豊かな海や自然が残っている場所。その自然を生かすことこそ、オーガニックでもあります。

 

ORGANIC CITY KISARAZU」の取り組み

さっそく、多くの市民にオーガニックなまちづくりへの理解を深めてもらうための取り組みが始まります。

「月に1回行う木更津ナチュラルバルというマルシェなど、オーガニック、ナチュラル、無添加など基準を設けながら行うイベントを増やしています。年1回のグローカルハピネスでは、ゴミ箱を設置しない、マイ食器を持ってきていただくなどエコな活動もしています。オーガニックシティフェスティバルは、2018年に第3回目を開催しました。まちをより良くする市民活動の発表の場でもあり、セミナーも充実した学びの場になっています」

理念の普及にはまだ時間がかかるものの、町を元気にしたいという思いは共有されているようです。

高校生による木更津産の食材でつくられたお弁当も

また、特筆すべきは、子ども達の食育や学校給食にオーガニックを取り入れていこうという取り組みです。

「農山部の農家さんの野菜を給食で食べ、学校の裏庭にコンポストがあり、リサイクルでつくられた肥料を農家さんに返すという地産地消と食の循環を、食育と合わせて取り組んでいます。また、有機米の普及ということで、小学校・中学校の学校給食をオーガニックにという目標を掲げた給食プロジェクトを行っています」

 

これまで、官民連携して田んぼで取れた無農薬米が、2018年2月には1日だけですが、市内全小中学校(小19、中13)の給食に提供されています。今後は生産者の拡大、有機JASの取得などを進めていき、通年で小中学校に提供できる体制が整えられていくそう。

 

「農産物に関しては農薬や化成肥料を一切使用しない、ブルーべリーを栽培している農園が現在8園あります。品種も色々ありますが、粒が大きくて甘みが強いのが特徴です。他にも農薬を使用しないパッションフルーツを生産・販売するJBKファームさん、有機野菜を生産・販売する農地所有適格法人『株式会社 耕す』さんなどがいらっしゃいまして、連携させていただきながら、オーガニックシティの推進を行っています」

オーガニックライフスタイルEXPOでも人気のブルーベリー

約9万坪(30ha)の広大な土地からなる「耕す 木更津農場」

 

持続可能な経済として、2018年10月から電子通貨コイン「アクアコイン」が導入されました。木更津市、信用組合、商工会議所が協力しあい、資金の地産地消を目指しています。

「後々は、地域コミュニティの活性化にも使えるようにしたいと思っています。ポイント機能にしてボランティア活動の対価として使えるようにするなど。アクアコインは、木更津市のセブンイレブンでも使える電子通貨なんですよ」

自然、経済、地域社会、人の個性を生かし、たくさんのアイデアが生まれています。

 

オーガニックシティとしての未来

木更津市役所全体、各課の職員がオーガニックに取り組んでいるそう。主体的に考えて行動するという、オーガニックの理念が浸透してきています。それでも、大変なこともありそうですが…

「大変だったことは、オーガニックの理解を得ていくこと。食や環境だけでなく意識改革的なところもあるので、押しつけになってはいけないですから。経済部門では店舗さんと直接お話したり、地道に対話を重ねています」

 

常に持続可能なまちをめざし、時代に合わせながらしなやかに動いていきたい、改良しながら動いていきたいと語る島村さん。行政では支えられない部分を支えてくれる存在、例えば市民活動や起業家、有機的なまちへと変えてくれる挑戦者への支援も積極的に行われています。年々人口が増加している木更津市。オーガニックシティとしてますます洗練されていきそうです。

千葉県木更津市公式ホームページ

GOTS地域代表でIFORM Asia理事の三好 智子さんには、2014年に当サイトで3回にわたりインタービューをして、GOTSについてお聞きしました。
第1回目:https://organicnetwork.jp/interview/2014/07/15/2040/
第2回目:https://organicnetwork.jp/interview/2014/07/21/2120/
第3回目:https://organicnetwork.jp/interview/2014/07/28/2183/

 

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奥田 景子

執筆者:奥田 景子

ライター(エシカルファッション、フェアトレ-ドなど)。福岡県生まれ。文化服装学院スタイリスト科卒業後スタイリスト。以降雑誌を中心にしたスタイリスト。社会的なことに興味を持ち、大学院で環境マネジメントを学ぶ。理学修士を取得。2013年から福岡を拠点に移してライターとして活動中。

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