オーガニックコットンの裁断くずから生まれた紙。「アバンティ」の渡邊さんが語る新たな挑戦

オーガニックコットンのオリジナルブランド「プリスティン」をはじめ、「東北グランマの仕事づくり」など、ソーシャルビジネスを幅広く展開する「株式会社 アバンティ」。

「オーガニックコットンをひろめたい」、「仕事はいきがい」、「子どもたちにきれいな地球を残したい」、という代表の渡邊智惠子(わたなべ ちえこ)さんの3つの想い。それは、さまざまなアイテムの服やものづくり、プロジェクトのベースとなっているものです。

そんなアバンティから、新しいコットンペーパーがお披露目されたという噂を聞き、早速お話を伺ってみました。

じつは自社のオーガニックコットンを使ったコットンペーパーは、1315年前に「再生木綿紙」として商標登録もされていたそう。

「ある日、化粧用コットンメーカーさんの工場に、山積みにされた裁断くずを見かけました。これはどうするのですか? と尋ねると、『燃やします』と言われ大変ショックを受けました。昔は布団の中綿に使われていたため需要があったそうですが、当時、ふとんに使われていたのは、ほとんどがポリエステル。仕方なく工場内で焼却処分されていたのです」

裁断くずを回収して紙がつくられます

洗いをかけた綺麗なコットン。こんなに綺麗な綿をつかって何かできないか? と、製紙会社の工場長を紹介してもらいます。こうして、落ち綿60%に40%のパルプという割合で、アバンティのコットンペーパーづくりがスタートしました。

 

新しい「再生木綿紙」の誕生

しかし効率性・生産性の社会では、小さな製紙会社は買収され細かいことに対応できず、「再生木綿紙」はつくることができなくなってしまいます。渡邊さんは機会がある度に、再生木綿紙のリバイバルをねらっていました。そして、ようやく主旨をくんでつくってくれる製紙会社さんが見つかりました。

コットンペーパーは名刺やタグに使われています

「製紙会社さんからのアイデアで、80%が牛乳パックのパルプを使っています。牛乳紙再生パルプを使用することが新しい挑戦です! 今回の紙は粗野感があります。色合いも生成りが強いですが、これはこれの良さが十分あります。印刷適正もあり、紙としてまったく問題ないものです」

そして、この取り組みを「リ・コットン」というカテゴリーにしていきたいそう。

「『リ・コットン』には、裁断くずを反毛して糸にして製品をつくること、裁断くずを紙にすること、という二つのルートを考えています。また、白だけでなくプリントや色物の裁断くずも使って、紙にしたり糸にしたりすることも考えています。将来的には、いろんな会社さんと一緒にやりながら、新しい価値を生み出していきたいと思っています」

「リ・コットン」の取り組みのひとつ製紙

 

未来のことを考えて行動する

現状に向き合いながら、課題の解決や挑戦を続けていくのは渡邊さんの流儀のようです。

「ネイティブアメリカンの考え方に『セブンスジェネレーション』というものがあります。7世代後のことを考えて行動しなさいということですが、350年先を考えて行動することは難しいですね。20161月、各界の代表される方々と一緒にラジオ番組をつくり、84年後の22世紀を考えました。2017年に設立した『一般財団法人22世紀に残すもの』は、その後の活動の幅を広げています。さらに『一般財団法人森から海へ』では、増え続けている鹿により森が荒れていることや、鹿の命が無駄になっている現状と鹿の命が無駄になっていることを知り、鹿肉を使った世界一安全なペットフードやオーガニックコットンのペットウェアをつくっています。また、いろいろな方をお呼びして講演会や勉強会、研修などの啓発活動を行っています」

今では廃棄するものにも目が向けられるようになりましたが、渡邊さんの考えや思いはずっと前から変わることなく続いてきたもの。ものを無駄にしないとはどういうことか、循環させるとはどういうことか深く考えさせられます。ものづくりに対する会社としての責任と、個人としての考え方や生き方まで一貫性があり感銘を受けました。

 アバンティ
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執筆者:奥田 景子

ライター(エシカルファッション、フェアトレ-ドなど)。福岡県生まれ。文化服装学院スタイリスト科卒業後スタイリスト。以降雑誌を中心にしたスタイリスト。社会的なことに興味を持ち、大学院で環境マネジメントを学ぶ。理学修士を取得。2013年から福岡を拠点に移してライターとして活動中。

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