徹底して合理的なデータ主義。ロッカーが栽培する「いせふじファーム」の無農薬いちご

美味しくて真っ赤な「いちご」に出会いました。そのいちごは、甘くてほんのりとした酸味と香りがあり、基本的に無農薬で栽培されています。いちごの無農薬栽培は難しいと言われています。可能にした要因は何だったのか、興味を持って福岡県筑紫野市にあるいちご農園を訪ねてみました。

 迎えてくれたのは、「いせふじファーム」代表の藤端孝径(ふじばた たかみち)さんとビジネスパートナーの鎌田浩嗣(かまた ひろつぐ)さん。二人とも、いわゆる農家さんの雰囲気とはちょっと違います。藤端さんへ、いちご栽培から農業までお話をうかがいました。

いせふじファーム代表の藤端さん

いろいろやってきて、必死になるものを見つけた

いちごは畝で栽培すると腰が痛くなるという理由で、栽培棚を使った高設栽培が採用されていました。

栽培されているのは、「よつぼし」という種子繁殖型のいちご。新規の苗で栽培するためランナー()から増殖させる栽培でない分、親株からの伝染がないため病気に強い品種。また、種から栽培されるので、農薬の必要性が少なく安定して収穫できます。

若きビジネスパートナーの鎌田さん

いせふじファームという名前は、三重県の伊勢市生まれで、20年前に福岡へ移り住んだ藤端さんが、覚えてもらいやすいようにと決めた名前だそう。福岡に住み始めてからいちご栽培にたどり着くまで、不動産会社、外車のディーラーなど、いろいろな仕事を経験しました。ちょっとやってみようかなと始めて、トップセールスの目標を達成したら辞めていました。30歳半ばの頃、そろそろ安定しようと考え、飛び込み営業して上場企業に勤めましたが、結局はあまり面白くないと辞めて、また不動産会社へ。

 「不動産会社の経理の人がちょっと面白い話があると。その人を介して、あまおうを初めて育種したグループの人がいて、その人の支援をするから、あなたはその営業をやらないかと誘われました。いちご農園のあまおうのシステム販売の仕事でしたが、結局そこも辞めました。TPPが話題になっていた頃で、海外に住んでいた経験があって英語も話せるし、保険の翻訳や通訳の仕事をしようかと思っていたんです。その時にも観光農園とのつきあいは続いていたので、たまたま農園にいちごを買いに行った時、まとめ役がいないからそういうポジションでやらない? とまた誘われていちごの栽培に関わることになりました」

 味よりも体験重視の観光農園が肌に合わず、突き抜けて美味しいいちごをつくりたいと思ったそう。さらにいちごはかなりの量の農薬を使用することを知ります。農薬を使わずに栽培できる方法を調べ、できそうだと確信が持てたので、独立して一人でやり始めることに。

 甘いフルーツには、虫や動物を引き寄せるため、色や匂いを出すという戦略があります。そういう作物には農薬は必須ですが、それも思い込みかもしれません。

 「いろいろ見てきて、それほど農薬は必要ないと感じていました。最初はハウスで、自分の考えたとおりにやったらできたんです。一年目は設備も新しく、土やハウス内も菌や害虫がすくないのでできるのですが、二年目も農薬なしでいけたので手ごたえを感じました。疑う気持ちが強いんですよね。何の根拠があってやるのかと。一株に6gと決まっている肥料があるんですが、濃度をはかればそれほど必要ないことがわかる。必要ないところを徹底的に調べました。そうすると、結果的にまかなくても良いことがわかります。書いてあるとおりにする必要はまったくないんです」

「少量の単一品種栽培でもやっていけるビジネスモデルをつくっていかなくてはいけないと思いました。そこで今は、鎌田さんと一緒にやっています。価格が高くても、極端においしいいちごへのこだわり、できるかぎり農薬を使わないことへのこだわりのため、どうしても価格が上がることを理解していただける人へ販売すれば、やっていけるということに気づいたからです」

 採用したのは、クラウドファンディングを活用したビジネスモデル。「すごくおいしいいちご、そしてそれが農薬をつかってないという価値をつくることが大前提です。

 収入のない夏場にブルベーリーやいちじくなどの栽培も考えたという藤端さんですが、いちご100%でいこうと思いなおしたそう。いちごの加工品も開発中です。

「音楽でもそうなんですが、必死でやることが大切ですよ。自分を追い込まないと、結局どれもうまくいかないんです。あれもこれもやるのではなく、収入のない夏にいちごに関してなにかできないか、そういうことを必死になって考える。毎年同じことをやっていて、それで儲からない、というのは当たり前です」

いちごづくりと農業への思い

よつぼしの育て方は公開されています。種子繁殖型のいちごが少しずつ広がって認知度を上げたいそう。自分だけでは限界があるので、底上げすることで、みんなが儲かるという考えです。また、公表しても個人差がでるのが、農業の面白いところですが、いちごづくりに愛情を持っている訳ではないそう。

 「基本的に化学的な根拠がないものは信じませんから。論理的なことしか信じないです。その代り死ぬほどデータを取ります。液肥を流した濃度や肥料をやる濃度など、時間、満月に新月、満潮、天気、気温、湿度など。引力が弱くなると葉っぱが肥料を効率よく吸い上げます。虫を殺す農薬も満月前に散布することで、効果が上がるので極端に農薬を減らせます」

いろいろな機械が導入されています

「もちろん昔ながらのやり方が良いという場合もありますが、今の時代はテクノロジーに恵まれているので、フルに情報を使っています。温度も湿度もスマートフォンへ飛ばせるようにしています。暖房機にしても、ハウスの開け閉めも、いつでもデータが取れるようになっています。体がきつくなってダメになるよりいいでしょう。無理して汗かいてやるのがいいとは思わないんです」

 一番成功した例は、灰色カビだそう。カビはそもそも胞子ではないかと気づいて、調べると湿度が100%になってから8時間後に飛ぶことがわかりました。9時から100%になるので、朝方3時~4時に暖房機をまわし乾燥させることで被害を免れました。

ハウスの中にはミツバチが飼われています

「農業自体をもっとやりやすくできればいいと思います。どうして若い人が農業をやらないのかと考えると、ドロドロになるし、休みがないし、そもそもかっこよくないし・・・。自分はあえて軽トラは使わない、農業ぽい格好もしない、髪ものばして、ギターを弾いて、しかもめっちゃ休みます。頭を柔軟にし、考えればいくらでもそれができるんです。いくら国や自治体が助成金出す、土地あまっているといっても、ボールを投げるだけで受け取る側の意識を向けないと、今の若い人たちは農業やらないですよ」

 農業分野でもシステム化できて、本当はかっこいいんじゃない、なんだ、思ったよりもできるじゃない? という流れができれば最高です。「若い人は情報に敏感だし、新しいことも好きだし、柔軟だから、すぐに気づく、面白いですよ」という言葉に安心しました。

ロックギタリストでもある藤端さん

 「自分はパイオニアになりたいんですよ。だから絶対に失敗できない、うまくいっているところを見せて、あんな方法もあるんだと思わせなければならないんですよ」と、熱く語る藤端さん。有機農業の取り組み面積は、耕地面積全体の0.5%ほどと言われていますが、有機農業の先入観を超えたオリジナルな農業の可能性を感じることができました。

 

いせふじファーム

問い合わせ:mitchrose001@gmail.com

 

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奥田 景子

執筆者:奥田 景子

ライター(エシカルファッション、フェアトレ-ドなど)。福岡県生まれ。文化服装学院スタイリスト科卒業後スタイリスト。以降雑誌を中心にしたスタイリスト。社会的なことに興味を持ち、大学院で環境マネジメントを学ぶ。理学修士を取得。2013年から福岡を拠点に移してライターとして活動中。

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