環境に負荷をかけない産業の創造。獣害として捨てられる皮を活用する「MATAGIプロジェクト」

餌がなくなった野生動物が里山に下りてきて農産物被害にあった、というニュースは毎年聞かれます。災害も増え、生態系のバランスが崩れている状況で、増えすぎた動物を駆除しなくてはいけなくなりました。シカやイノシシの肉をつかったペットフードなど一部の商品開発もされていますが、そのほとんどは捨てられているそう。

 MATAGIプロジェクト」は、捨てられる獣皮を有効な資源として活用し、地域の活性化につなげる国内唯一の獣皮活用を支援するプロジェクト。一般では流通が難しい獣革を、産地の独自ブランドにすることを目的に、2013年から実行委員会が発足。20203月現在、350ヶ所の産地や団体をサポートしています。

 

獣皮を「革」に変え市場のニーズをつくる

皮をはぎなめす作業

古来イノシシやシカなどの肉や皮は、里山に住む人たちにとって山の恵みとも言えるもの。有効活用できない理由は、「獣肉を流通させるには、管理された衛生的な施設で速やかに精肉する必要がある」ことに加え、「販路の開拓や地域ぐるみの取り組みが不可欠になるから」だとか。また、皮については、革を柔らかくする“なめし”を行う必要があるそう。なめしは、そのままでは腐ってしまう皮を「革」に変えるために必要な作業。狩猟による獣皮では、ナイフ傷や余分な肉片の付着など、狩猟者によってバラバラな前処理が課題でした。

講座や工場見学には多くの参加者が集まります

この獣皮をなんとかできないかと、相談を受けたのが、なめし専門業を営む、東京・墨田区にある1938年創業の「山口産業株式会社」。そして、加工前の情報提供や製品化、販売など問題の数々を解決するため、山口産業と産地、地域支援に関わる人たちのネットワーク「MATAGIプロジェクト」が生まれました。企業や学校、NPO団体などが加わるプロジェクトの実行委員会が、市町村・猟友会・行政などの産地をサポートしています。

 

自然環境に配慮したベジタブルタンニン100%使用のなめし

日本エコレザー基準にも準拠する皮革素材

一般的な靴やバッグのなめしでは、重金属系のクロムが使われています。クロムなめし革は、温度や湿度などの影響で、人にも環境にも危険な六価クロムが検出されてしまうこともあるそう。山口産業によって、ミモザアカシアの樹皮を精錬し、天然成分である植物タンニンを抽出してなめし剤として使用する「RUSSETY LEATHER®(ラセッテーレザー)」が開発されました。

美しく染められ革

山口産業が設立した「一般社団法人やさしい革」には、この「RUSSETY LEATHER®」を通じて、製品自体も使う人にもやさしい皮革商品であること、さらにその素材生産過程から消費にいたるまで「やさしさ」に包まれた消費文化を育て、次世代につなげ広めてゆきたいという想いがあります。

「RUSSETY LEATHER®」を広めるべく、さまざまなプロジェクトも行われています。中でも「MATAGIプロジェクト」の基本にあるのは、「一人でも多くの人たちが協力し合い共創し、いただいた命を最後まで使い切る精神を次世代へとつなげていく、循環型社会を目指して活動を続けていく」というもの。そのスタンスにとても共感しました。

 

MATAGIプロジェクト
山口産業株式会社
一般社団法人やさしい革

企業情報

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奥田 景子

執筆者:奥田 景子

ライター(エシカルファッション、フェアトレ-ドなど)。福岡県生まれ。文化服装学院スタイリスト科卒業後スタイリスト。以降雑誌を中心にしたスタイリスト。社会的なことに興味を持ち、大学院で環境マネジメントを学ぶ。理学修士を取得。2013年から福岡を拠点に移してライターとして活動中。

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