中米小規模生産者の日本有機・認証市場における可能性 に関するレポート作成の覚書(今井 登志樹)

IFOAM=世界有機農業運動連盟は、1972年にパリ近郊で設立され、農薬と化学肥料の多用で疲弊する大地と、生産に携わることで健康を害する農民、店頭に並ぶ農産物に不安を抱く生活者に向けて、有機農業=オーガニックという方法を提唱し、その普及をもって世界の変革を目指した国際的なネットワーク組織であるが、現在その数は約100ヶ国、900団体に及んでいる。

 
本来、有機農業は農薬や化学肥料に依存しない農法であると同時に、農場内、あるいは地域内で循環し、持続する農業を目指し、その消費においても極力、近隣地域の人々が食することを理念、原則としている。

 
しかし、なかなか生産と消費が、そうした理想的なバランスで成立することは難しく、生産と消費のアンバランスは有機の世界にあっても、南北問題をなぞっている。
IFOAMジャパンは、IFOAMの國際ネットワークの日本を代表する組織であり、世界の有機農業の発展を願うものだが、何よりも日本国内の有機農業の発展と育成の支援を活動の中心に据えている。

 
そのIFOAMジャパンが、小規模とは云え中米の有機生産者の作物が日本市場で流通する可能性を調査報告する仕事を引き受けたのは何故か?
また、このレポートが日本の有機農業、市場の発展に寄与するものとなるのか?
そうした問いかけにも答えながら、04年2月から7月まで足掛け半年に及んだ仕事を振り返り、リポートする。

 
この調査・報告の仕事は、IFOAMジャパンがWB=世界銀行とFAO=国連食料農業機関から委嘱されたものである。
03年11月にタイ・バンコクで第7回IFOAM有機食品市場国際会議があり、IFOAMジャパンは村山理事長、徳江・松本両常任理事を派遣した。この会議に先駆けて、IFOAMとFAO、そしてタイで有機農業を推進するグリーンネットワークという団体の共催で、<アジアにおける有機野菜と果物の生産と輸出について>というセミナーが開催された。その時のFAOの担当者から<日本の有機市場動向>と、<中米の小規模認証生産者の日本市場流通の可能性>を調査・報告するので、コンサルタントを紹介して欲しいという打診が帰国後、村山理事長にあった。

 
理事長が理事会に諮った結論は、FAOの要請する仕事を深く、広く行うことが出来るのは、IFOAMジャパンより他なく、コンサルタントを紹介するのではなく、IFOAMジャパン自らが行う!というものであった。

 
11月同時期に、IFOAMジャパンは科学技術館ホールで、2003年の有機動向報告会というフォーラムを開催した。このフォーラムに向けてIFOAMジャパン、日本SEQ推進機構、総合市場研究所とが協力して、2001年の有機JAS制度本格施行以降初となる市場調査に基づく総覧<安心安全食品の動向・有機特別栽培マーケット総覧2003>を発刊した。
145ページに及ぶこの冊子は、有機JAS施行後の有機及び特別栽培農産物の市場動向、消費者を始め、農産物生産者、加工品製造者、卸、仲卸業者の動向や、各県を含む行政の取り組みを調査・報告したものであるが、これを更に充実し、2004年版を作成することがIFOAMジャパンの行うべき仕事としてあり、WBとFAOの依頼は絶好のタイミングであったのだ。

 
しかし、WBとFAOが委嘱し、報酬の伴うこの仕事は、<やります><どうぞ>といったものでなく、国内の大手銀行の総研など、10数社が名乗り出て、コンペの後に委嘱されるものであった。
理事有志は数日で、このコンペに向けた企画案を作成し、村山理事長の令嬢=和季さんが在住するスペインで翻訳を行い、ローマのFAO本部に送付提出するという作業を終えた。
待つこと3週間、コンペの結果はIFOAMジャパンが最高得点でこの仕事を受託した。

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