未来の地球のために(山岡 俊文)

2005年6月7日、弊社のオーガニック製品は、寝具として世界で初めて有機国際認証を取得した。認定機関は世界でもシェアと知名度の高いフランス・エコサートSAS社とアメリカ・NSF−QAI社のグループ会社「エコサート・キュー・エー・アイ・ジャパン」(EQJ)である。認定されたのはオーガニックの糸・生地、ふとん(羽毛・ウール・コットン)、綿毛布、クッション、タオル、カバー、肌着の計34品目である。

 
私が「オーガニック」にこだわり始めたきっかけは、子どもの病気である。私の長男はアレルギー性の喘息があり、物心ついたころから夜中に発作を起こし、何度も救急車で病院へ運ばれた。救急隊員に「呼吸をしていない」と言われたときのショックを思い出すと、いまでも震えが来る。幸い一命をとりとめたが、あのとき、親としてこの子をぐっすり眠らせてやりたい、この子と同じ苦しみをもつ人たちのためにもっと眠りやすいふとんを作りたい!と思い、今日に至っている。

 
日本にもオーガニック素材を使っている製品はいろいろあるが、素材がオーガニックでも製造工程で有害化学薬品を使用していたり、あるいは何らかの原因で汚染された場合、私の長男のようにアレルギーがあると、体が敏感に反応して、受け付けない。製造にあたっては「安全性の確保」が第一に優先されなければならず、全くごまかしがきかない。それゆえ、原綿から製造工程での使用薬剤を見直し、できるだけ安全なものに変え、防ダニ・防臭・抗菌加工剤や蛍光増白剤生物や環境に有害な化学物質はは絶対に使わないこととした。

 
とくに蛍光増白剤合成化学薬剤の移染防止のため、ブラックライトなど検査を厳重にし、他の一般製品と別管理で製造・保管するようにした。とりわけ合成油剤や蛍光剤などは移染しやすいため、機械清掃、ロス発生など現場の苦労は並大抵ではなかったと思う。が、結果として、これまでのこうしたこだわりが、欧米での「オーガニック」に近づいていくプロセスだったと今回、初めて自覚した次第である。

 
オーガニック先進国の欧米ではその明確な生産基準に基づいて生産・加工・管理・流通され、「オーガニック」といえば、どこの誰がどのようにして作ったものか、農薬や加工段階での有害化学薬品不使用、製品から産地まで製造履歴がトレースできるもの、という認識である。しかし日本のオーガニック製品には法的規制がないため、「オーガニック」は「自称オーガニック」にすぎない。たとえば価格の安い農薬入りの安価な一般栽培綿をも使いながら「オーガニック」と名前をつけて、高い価格で売ることもできるし、皮膚刺激性のがあるり、生分解されない蛍光増白剤など、他からの化学薬剤に汚染されていても「オーガニック」だ。消費者の皆様は本当に安全なオーガニック製品を確かめる方法がない。

 
有機国際認証取得が日本のお客様にご提供できる最大のメリットは何か。それは、お客様の目の前にあるオーガニック製品がどのように作られたのか、消費者に代わり第三者的立場の国際的な認定機関や第三者(認定機関)の第三者であるオーガニック検査員の方が、厳しいオーガニック世界基準をベースに、製造にかかわる全工程の実地検査を行い、

  1. 原料の信頼性、
  2. 製造工程における有害化学物質の不使用、
  3. 製品のオーガニック素材使用量(基準では製品総重量  の95%以上オーガニック素材使用でないと、残り5% 未満も含め、全素材の安全性の証明ができなければ「オーガニック」といえない)、
  4. 保管状況:一般品との移染・汚染防止(運送状況含む)、
  5. 製品から原料までの製造履歴追跡システム、を製造にかかわる全工程の実地検査の上、確認した、という点である。

 
3週間を要した9府県27ヶ所の工場検査は、NPO日本オーガニック検査協会の研鑚を積んだプロの検査員によるたいへん厳しいもの検査であった。事前に提出した 1原料、半製品、最終製品の入荷、製造・下降加工、保管、出荷、流通に関する記録、2製造履歴追跡の記録、3害虫管理記録、4製品包装資材の成分証明書、5運送業者宣誓供述書、6清掃・製造記録などなど、そのすべてが環境・生態系に悪影響を与えていないか、オーガニック性を保持するシステムになっているか、の2点に集約されており、「有機」はまさしく「管理」であることを教えていただいた。

 
今後私たちは、1年ごとに同じように検査を受け、すべての管理記録を5年間保持しなければならない。手間もコストもかかるが、生態系の一部である私たち人間、土や水の中の生き物たちに対する有害化学薬剤の悪影響を少しでも減らすため、繊維業界においてもこうした動きが広まって、有機が広がることを願う。ものづくりに関わって○○年、100年後未来の地球のために、神に生かされている生命をもつ全ての生物のために。

 
出典:BioFach Japan 2004 公式ガイドブック
執筆者:株式会社ハート 山岡 俊文

PROFILE:
株式会社ハート1988年設立。当初から「安全・安心」にこだわり、人の身体や環境へのマイナス要因を徹底排除し、消費者に寄り添うものづくりを進めてきた。その結果として2005年6月、世界初の繊維製品の有機国際認証を取得。

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