有機農地面積が一千万ヘクタールを超え、世界一の有機食品生産を誇るオーストラリア。国内外の需要の伸びにより、オーガニック食品の生産量は、近年、年率25%を超え、急速な成長を続けている。また、輸出量も変動はあるものの、長期的には増加傾向にあり、2001年には3万7470トンを記録した。その中で日本向けは2003年に全輸出量の33.6%に達し、国別で最大となった<表1参照>。そんなオーストラリアの生産国としての優位性はどんな点にあるのか、また、今後の輸出拡大の可能性はどうなのか。農業研究開発公社(RIRDC)が公表した「オーストラリア産オーガニック食品の輸出の可能性に関する報告書」よりその要因と見通しを探ってみた。
まずオーストラリアの有機生産国としての優位性として、北半球市場と逆の季節性、多様な気候がもたらす供給の安定性、厳しい食品衛生管理システムなどが挙げられる。また、世界中でBSEや鳥インフルエンザが横行する中、オーストラリアではこれらの疫病が発生していないことも注目すべき利点だ。
現在、オーガニック農畜産物の農家産出額は、1億4100万豪ドルに及ぶ。品目別では牛肉が4割で最も多く、ついで、野菜、フルーツ・ナッツ、穀物などだ。急成長する国内市場を初め、EU、米国、日本を中心とする各国の需要増加に伴い、さらなる生産の拡大が期待される。輸出の可能性については、中国、南米やその他の新興有機輸出国との競争、干ばつなどの自然災害に対応した安定的な供給体制、認証機関の統一性の欠如などが今後の課題としてあるが、長期的には多品目にわたって増加することが予想される。項目別にみると、まず牛肉・子羊肉などの食肉、穀物・穀物加工品の拡大が考えられる。特に畜産物にいては広大な有機牧草地、BSE、口蹄疫清浄国としての利点、従来からある農畜産物の価格優位性や慣行から有機生産への転換のしやすさなど、輸出拡大に有利な環境要因が多い。さらにワイン、果実・野菜をベースとした加工食品(缶詰、冷凍食品、ジャムなど)、ベビーフード、ペットフード、家畜飼料などもすでに確立した流通ルート、世界的な競争力に乗じて、伸長すると思われる。
日本への輸出については、輸入食品に対する燻蒸処理や高い関税などの日本の輸入管理規制により、安易とはいえないが、日本の有機市場の拡大に伴い、さらに増加すると思われる。すでに加工食品、飲料・ジュースなども多く輸出されるが<表2参照>、今後、食肉、大豆やトウモロコシ、小麦などの穀物加工食品、飲料、ワインを中心にさらなる拡大が予測される。その際、日本の食習慣に見合った商品開発、商品の多様化、価格優位性、さらに、新有機JAS規格との調整などがポイントとなりそうだ。
オーストラリアの認証制度・認証機関オーストラリア連邦政府検疫・検査局AQISによりオーストラリア有機・バイオダイナミック規格(ANS)が制定されている。現在オーストラリアにはANSに認められた以下、7つの有機認証・バイオダイナミック認証機関が存在する。この内、新有機JAS規格の外国登録認定機関として認められているのは現在ACOだけだが、今後、他機関も加わると思われる。
●AustralianCertifiedOrganic(ACO)
●NationalAssociationforSustainableAgriculture(NASAA)
●TheOrganicFoodChain(OFC)
●SafeFoodProductionQueensland(SFQ)
●Bio-DynamicResearchInstitute(BDRI)
●OrganicGrowersofAustralia(OGA)
●TheTasmanianOrganicProducers(TOP)
出典:BioFach Japan 2006 公式ガイドブック
執筆者:オーガニックEXPO事務局
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