2. 飼料高による有機飼料の減少
次に昨今の世界的な穀物高によって、諸外国でも有機飼料を探すことは大変困難になりつつあるという点です。飼料穀物の取引価格はバイオエタノール需要により上昇し続けており、今年に入って米国では農家の収入が過去最大になりました。こうした現状では、生産現場において手間をかけずいかに効率よく多く収穫するかが問われますが、有機農業はそれには向きません。そのため有機飼料用作物に関する作付面積は減少する傾向にあり、それに伴って有機飼料価格は通常の飼料価格以上に大幅に上昇しています。現在では有機の配合飼料価格は通常の価格の2.5倍から3倍となっています。
3. 小売段階での価格
有機畜産をビジネスとして成功させるためにはこうした生産コストの増大に見合うだけの価格プレミアムが小売段階でつくかどうかが非常に重要になってきます。現在国内で市場に流通している有機卵は、高級スーパーや百貨店で販売されており、6個入りパックで600円以上、つまり卵一個当り100円以上の値がついています。高価格になる有機畜産物では小売段階での戦略的な販売計画がなければ消費者に受け入れられません。
4. 有機畜産を認定している登録認定機関の現状
さて、飼料原料の確保や緻密な販売戦略を建てた上でさらに重要になってくるのが登録認定機関による認定です。現在、国内では合わせて69の機関が有機JASの登録認定業務にあたっていますが、そのうち有機畜産物のJAS規格を認定可能な機関は20社に過ぎません。有機畜産を認定するためには有機畜産物の認定機関としての基準を満たすために新たに申請し直す必要があるからです。
この20社の内、実際に有機畜産の登録認定業務を行っているのは、4?5社ほどと見られており中でも、有機飼料を海外から単味で輸入し配合した飼料を認定しているのは、有機畜産の分野で強みを持つエコデザイン認証センター1社のみとなっています。市場に流通し始めた有機卵は同社他1社が認定しています。酪農の分野では北海道の北農会など3社が有機牛乳の認定を行っています。
有機飼料に関しては上述したように海外からの輸入に頼ることが現実的になのですが、その際問題となるのは、海外から日本の農場へ輸送する間の有機性の確保です。海外での有機飼料生産農場との契約や、流通、倉庫での保管、運搬の各段階において、慣行の飼料と有機飼料との、混合を防ぐための管理は容易ではなく、そこには畜産分野に精通した知識やノウハウが求められるため、登録認定業務を行うのも容易ではないのです。実際には国内で有機畜産を認定できる機関は非常に限られてくるというわけです。
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