ドイツオーガニック業界の歩みと動向(浅野・レッケブッシュ 経緯子)

ヨーロッパ最大のオーガニック市場を誇るドイツ。毎年2月にドイツのニュルンベルクで開催されるオーガニック専門見本市 BioFach(ビオファ)は、オーガニックを一過性のブームに終わらせないため、毎年新しい分野やテーマ国を選び、精力的に紹介に努めてきた。個人や社会のニーズを巧みに取り込みながら、利益のあがるビジネス産業へと見事な転換を遂げたドイツのオーガニック業界。BioFachは、その道筋を作るのに大きく貢献してきたといえる。

 
10年間にわたりここドイツでBioFachに携わることにより、製品の素晴らしさ、その商取引の難しさを間近に見ることができた。この BioFach Japan 2009の誌面をお借りして、ドイツのオーガニック業界の成功要因や市場の現状、今後の取り組みについて少しでもご紹介できれば幸いである。なぜなら、日本でも BioFach Japan を通じて、オーガニックやナチュラル関連製品により多くの支持者が生まれることを期待してやまないからである。

 

ドイツのオーガニック業界の成功要因

ドイツのオーガニック業界が今日のように目覚しい発展を遂げたのは何故であろうか。ドイツでも短期に市場が拡大したのではない。1900年代初頭から約1世紀にわたり、普及と理解促進にじっくりと取り組んできたことが根底にある。すなわち、成功の決定要因は、自然や健康といった価値感が消費者の心の奥底にどれだけ浸透しているかによるのである。それでは、この価値感がドイツの消費者意識にどのように入り込んでいったのかを時代に即して紹介していきたい。

 
第一の波は、第一次世界大戦後にやってきた。燐酸系・窒素系の化学肥料の多用により、土壌の状態、作物の風味、種の発芽率、家畜の健康が著しく損なわれたのである。1800年代後半から始まった改善運動を継承するReformhaus(レフォルムハウス)は、無添加の自然食品や機能性食品の販売を通じ、食生活の改善をドイツ国内に推進していった。また、人智学の創始者であるシュタイナー博士は、自然の摂理に従い農業を営み、作物本来の持つ生命力を最大限に引き出そうとする新しい農法を提唱した。このバイオダイナミック農法を、Demeter(デメター)という団体が忠実に実践していったのである。この両者の啓蒙活動は、健康な生活を願う社会層を中心にゆっくりと浸透していった。これらのパイオニア達が、現在もドイツ国内において高い知名度を獲得しているのは言うまでもない。

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