今求められる企業の姿と認証の役割 環境・CSRと持続可能な社会に向けて(山口 真奈美)

2. 企業活動と社会的責任

私たちの生活を支える製品は、様々な人々が関わっていますが、主に企業が主体となって生産されています。では企業活動を存続させるために、何が必要なのでしょうか。

 
企業は利潤を追求し、モノやサービスを社会に提供し、その対価の利益で継続していることはいうまでもありません。しかし、その企業のサービス内容や製造プロセスを見直したとき、原料調達から製造過程、最終製品の販売に至るまで、環境負荷や不当な労働条件や児童労働など社会的な問題は潜んでいないと公言できるでしょうか。特に海外の資源に少なからず依存している日本では、生産者の顔が見えにくく、環境や社会的な部分まで把握することはとても困難です。

 
しかし、知らないという罪はとても大きく、企業も自社製品として販売する以上、その生産プロセスに係わる状況の把握が求められはじめています。近年、環境報告書やCSRレポートなどが盛んに発行されているのも、企業が説明責任を果たしている一部だとも言えるでしょう。

 
そもそもCSRとは何なのでしょうか。CSR(Corporate Social Responsibility)日本語では「企業の社会的責任」と訳されますが、企業が自社の利益の追求のみならず、その活動が社会に与える影響を把握し責任を持ち、課題をどう果たしていくのか、また株主投資家・社員・消費者・そして社会などのステークホルダー(利害関係者)に対する説明責任でもあり、信頼されるために必要なことともいえます。

 
さらにその責任の意味は、しなければならない対応策としてよりも、むしろ企業の信頼性を高めるために、個々に持つ特徴やサービスを生かし、社会にどのように貢献していけるのかが大切だともいえます。つまり、企業が持つノウハウや技術などを通じて、今立ちはだかる、もしくは今後解決していかなくてはならない問題について、いかに取り組むか、余力での社会貢献だけではなく、事業活動自体に関係する本業でのCSRが、とても大きな効果を生むことに繋がります。

 
それは、本業にCSRが組み込まれていることによって、企業の活動の継続にも繋がります。例えば、適切な管理のもとに持続可能なかたちで資源を調達する、農場であれば人体や土壌に影響のある有害な物質を使わないなど、持続可能な社会づくりに繋がるような事業形態でなければ、原料自体の調達が困難となり、何れ事業も行き詰ってしまうかもしれません。さらに、原料調達時ばかりでなく、製造・流通過程においても同様です。

 
児童労働などの問題は社会的にも大きく、様々な団体や人々が解決に向けて取り組んでいますが、企業は委託先や外注先で本当にこの問題を抱えていないか、そして工場をはじめ、作り手となる人々のケアや人権・労働条件など社会的な部分も環境と合わせて配慮しなければならない重要な要素といえます。

 
また、投資のあり方もこれらの視点を踏まえ、SRI (Socially Responsible Investment : 社会的責任投資)、そして投資基準にESGの要因が入っているかが問われ始めています。ESGとは E (Environmental : 環境)、 S (Social : 社会)、 G (Governance : ガバナンス)の頭文字であり、これらを意識した企業活動が国際社会の中では必須となりつつあります。このような非財務情報の開示を積極的に行うことで、企業は透明性(Transparency)を向上し、より信頼のある企業だと認知されていきます。

 
そして、企業活動自体が環境や社会を意識した持続可能な体制であれば、企業の発展に伴って持続可能な社会が形成されていくことでしょう。
オーガニックやナチュラルという言葉をキーワードとする企業にとっては、その活動は社会への貢献度も基本的に高いかもしれません。さらに本物であると主張するために、透明性の確保をどのようにしているのでしょうか。

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