しかし、この法律が効果を発揮するには、その存在があまねく知られ、理解されることが前提になります。そこで少しでも多くの方にこの法律の存在と内容を広報することが重要であると考えた私共事務局は、林野行政の管轄官庁である林野庁に出向き、現在行っている広報活動に加え、オーガニックEXPOを広報の場として活用して頂くことを提言しました。その結果、林野庁からは、講演とブース出展の二本立てで参加が決まりました。
しかし、この法律では、当面の間、低層の建物に限定されるため、これで木材の消費が大幅に増えるとは考えにくく、これだけで消費を賄うには不十分です。そこで低層に限らず、中高層建築でも木造が可能になれば、木材の消費は大幅に増加します。この木造建築の高層化が可能であることを永年研究され、それを実証されている先生がいらっしゃいます。東大の腰原准教授です。そこで私共は腰原先生に事情を説明し、講演という形でオーガニックEXPOにご参加頂くことを快諾して頂きました。
都会が「コンクリート・ジャングル」と言われて久しいですが、先生のお話によれは、将来、コンクリートが「木」に、ジャングルが「森」に変わります。
こうして都会の中高層ビルが木造になれば、まさに「都市の森」が誕生します。
このように、低層はもちろん、中高層建築でも木造が可能になれば、木材の需要は格段に増加します。ここで木材需要の唯一ネックになっているのが、木材の可燃性です。この点が解消されれば、木材の需要を妨げる主要な要因はなくなります。実は、この木材の不燃化技術をすでに確立している会社があります(株式会社 アサノ不燃木材)。
オーガニックの世界の出現
こうして低層をはじめ、中高層建築で木造が可能になり、かつその木材が燃えないということになれば、木材の需要は一気に高まります。そうなれば、林業は活性化し、ひいては森が蘇生します。森が健全化すれば、良質の木々が成育することはもちろん、森林の保水力が増し、土砂崩れや山崩れなどの災害が減り、ミネラルを豊富に含んだ湧水が河川となって海に注ぎ、ミネラルの豊富な栄養を吸収したプランクトンが増殖し、それを捕食する魚が集まって良好な漁場が出現します。こうして森と海が有機的に繋がり、蒸発した海水が雨となって森に降り注ぎ、河川となって再び海に戻る自然の循環が再構築されます。これはまさにオーガニックの世界の出現です。このオーガニックの世界の実現に、私共のオーガニックEXPOが少しでも貢献できるなら、それは私共にとって大きな喜びとするところです。
出典:BioFach Japan 2011 公式ガイドブック
執筆者:オーガニックEXPO事務局
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