私たちができること(作吉 むつ美)

検査員研修

1998年から、IOIAとの共催でオーガニック検査技術講習会をほぼ毎年開催し続けている。検査員志望者や経験者が大勢参加してきているほか、二者認証を行っている団体からも利用がある。また、申請する側として、生産者や加工業者もよく参加される。ここ数年の傾向としては、認証機関のスタッフや認証機関から派遣されてきた検査員の参加が半数をしめている。ただ単に農業や製造技術の知識があれば検査ができるわけではなく、検査を行うにあたって必要な視点、姿勢を習得しなくてならないということが、徐々に理解されてきているのだと認識している。
また、初心者向けの講習だけでなく、テーマ別にレベルアップを図るための研修やセミナーも様々用意している。たとえば「衛生管理」や「表示」、今年のようにJAS規格の改訂があれば、その解説のセミナーも計画中である。

 

事業者向け研修

有機JAS認証制度では、認証をうける事業者のなかで、担当者には講習受講が義務づけられている。そのための講習会も開催しているが、多く利用されるのは講師派遣である。認証機関主催の事業者向けの講習会や、一企業や一農業者グループなどに、講師が出張して講習を行うという仕組みである。

 

オーガニック・コミュニケータ講座

検査員という役割上、どんなにすばらしい生産者に出会っても、美味しくて品質の高い加工食品を知っても、宣伝をして歩く訳にはいかない。どうにかして広げる手伝いができないかと考えてきた。そして周りをみると、周囲の消費者たちは、オーガニックどころか、食の成り立ちについてあまりにも知らない人が多い。いや、流通にたずさわる方であっても、生産製造の現場や、認証の仕組みを理解していなくて驚くことも多い。それなら、私たちが溜め込んでいる知識や経験が役に立つと、創り上げた講座である。
講座では、認証の制度や基準の骨子をおさえながら、オーガニック食品の成り立ちや特徴をできるだけ正確に伝えることをモットーとしている。講師は現役検査員。オーガニックのメリットだけでなく、デメリットや現状の課題なども率直に語るということもポイントだ。基礎講座から始まり、米・調味料・ドリンクなどと製品群で分けた数回の講座を用意している。参加された方が、終わってから「オーガニックって、こんなものなのだ」と語れるよう、盛りだくさんの内容でお届けしている。

 

今回、IFOAMのブースやワークショップなどで、この講座の紹介も行ったが、日本の消費者は、お金をだしてオーガニックの勉強をするのかと、何人もの方に感心された。そんな日本特有の環境を活かして、このささやかな活動を続けていきたい。

 

出典:BioFach Japan 2011 公式ガイドブック
執筆者:作吉 むつ美

PROFILE:
オーガニック検査員
1993年、IOIA(International Organic Inspectors Association)の検査員研修を受けたのち、日本・アジアを中心に検査活動を開始。1997年、日本オーガニック検査員協会設立。検査活動の傍ら、検査員育成、事業者向け研修などにも力をいれて活動。近年は、アジア各国での検査員研修での講師活動も始める。日本オーガニック検査員協会参与。JOIA/IOIA公認講師。

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