15年に渡り、バングラデシュなどの途上国から魅力的なバッグやアパレル商品を提供している「MOTHERHOUSE(マザーハウス)」。「MOTHERHOUSE」から、途上国の食を活かしたフードブランド「Little MOTHERHOUSE(リトルマザーハウス)」が登場しました。第一弾は、まるでファッションアイテムのようなチョコレートです。
現場を知り、現地の素材と職人と一緒にモノづくりを続けてきた「MOTHERHOUSE」代表の山口絵理子(やまぐち えりこ)さんを知っている人も多いのでは。そのフィロソフィーをそのまま受け継いで、新たに食の分野が展開されました。
フードブランドの誕生までを、マザーハウスの広報をつとめる小田靖之(おだ やすゆき)さんにうかがいました。
途上国の食の可能性と対等なものづくりを
インドネシア・スラウェシ島の契約農家さん
「MOTHERHOUSE」のモノづくりは、生産までのすべての工程を現地で行うこと。「Little MOTHERHOUSE」でも、チョコレートはインドネシアのスラウェシ島で、生態系を守りながらつくられています。
「途上国から世界に通用するブランドをつくる」という理念のもと、食のブランド立上げに違和感はまったくなかったそう。
「もともと、途上国にはファッション素材以外にも食の素材の可能性があると思っていたんです。いつも、モノづくりしている6カ国の途上国では、みんなカレー食べているよね、美味しいマンゴーがあるよね、美味しいコーヒーや紅茶があるよね、と社内で話題になっていました」
ブランド立上げのきっかけとなったできごとがあったのでしょうか。
「それはコロナが大きかったんです。『MOTHERHOUSE』は路面店でも展開していますが、外出自粛が続き、バッグやジュエリー、服は外にでかけるためのツールだったと気づかされました。家にいても『MOTHERHOUSE』の価値を伝えるプロダクトが、何かあるのではないかという仮説から始まったんです」
現地の環境保全のためアグロフォレストリーで栽培
コロナ禍は、さらにフードブランドの実現を加速化させます。
「1ヶ月半くらいでしょうか、自粛で店舗もクローズしていたため『新しいプロダクトの可能性を探っていきたいね』ということになりました。家にいることで『食』は感情を揺さぶることに気づいたんです。靴やバッグ、服で気分が上がるのと同じように食べることで気分があがる。ファッションと同じだなと、生活に即したものだなと。その中で『フード』というキーワードが具体的になっていったんです」
イロドリチョコレート 12種類のフレーバー
縦6.5cm×横13.4cm×高さ1.6cm:1,296円(税込)
ファッションと食を楽しむことがつながっているという気づき。美味しいことや健康に良いことも大事だけれど、ハッピーになる、ワクワクするような色合いなど、フードもファッションと同じだと認識されました。「Little MOTHERHOUSE」のチョコレートには、ファッション性が表現されていると感じます。
「これまでの15年間に、そのエッセンスはありました。『イロドリシリーズ』の目で見て楽しむ色、グラデーションなどを、食に落とし込むとどうなるかという仮説をたてて。副社長の山崎と2人で、延々と7~8ヶ月議論していましたよ(笑)」
「Little」には、どんな意味があるのでしょうか。
「それは、途上国の小さな一粒に込められた思いというか、小さいものは美しいと思います。ささやかで小さいモノの中にある可能性を感じてほしい。それにサウンドとしても可愛いですよね」
現地の人と共に、製造から販売まで行うのが「MOTHERHOUSE」の流儀。さらに、今回商品開発されたチョコレートは、スラウェシ島からカカオを通して世界を変えていく「Dari K(ダリケー)」。そして「Shodai bio nature(ショーダイビオナチュール)」とのコラボ商品です。
「今まで山口も副社長の山崎も、1年の半分は現地に行って、現地の人とコミュニケーションを取りながら、モノづくりしてきました。今回のハードルは、コロナ禍で現地に行けないところ。現地の社会課題を解決するモノづくりしていた『Dari K』さんとは、以前から情報交換をしてきました。インドネシアのカカオの価値を高めて伝えていく、生産環境・立場・環境を改善していく姿を見て尊敬していました。お声掛けしてみると、とんとん拍子に進で『Dari K』さんのカカオの価値を最大化させたいと思いました」
インドネシアオリジンズ 8粒セット:2,484円(税込)
人工的な着色料や化学的な香料を極力排除する、という調理哲学を持つ「Shodai bio nature」。お菓子づくりに対してストイックな姿勢を貫いているメーカーです。
「自社でホワイトチョコレートを開発したのですが、『Shodai bio nature』さんに加工する段階で参加していただきました。食もただパッケージが可愛くて、原料が良いだけではダメだと。やっぱり美味しくないと継続的に買っていただけないので、味にこだわった『IRODORI CHOCOLATE』を開発しました。自然由来の色と味付けを相談しながら一緒に開発したんです」
ホワイトチョコレートにフルーツなどで色付けされたイロドリシリーズ
何回も試作して、試行錯誤を繰り返し、おおよそ3~4カ月間かけて完成したというチョコレート。一つのものができあがるまで簡単にはいかないと言います。今後はどんなものが開発されるのでしょうか。
「これからも、『MOTHERHOUSE』のフードブランドとして、カカオを使ったチョコレート商品以外も随時企画をたていく予定です。途上国の原料に美味しく、可愛らしく、格好良く、手に取って気分が上がって、こんな体験があるんだ! と驚きもある、そんな価値をつけて展開していきたいですね」
コロナ禍は結局、私たちにいろいろなことを考える機会を与えてくれました。最後に「Little MOTHERHOUSE」のベースとなっていること、大切にしていることをお聞きしました。
「それは、すべての工程で透明性高くやっていく、可視化することです。プロダクトができあがるまでの生産のプロセスや背景を知ってもらえるように。あと、付け加えるならば、売る人も買う人もつくる人も、プロデュースする側も、すべて対等なものづくりをしていきたいです」
カレーやコーヒー、紅茶など途上国の特徴的なものを「Little MOTHERHOUSE」らしく加工し、エッセンスを加えていけるかどうかと悩む日々だそう。
「MOTHERHOUSE」の妥協しないモノづくり。自分たちのやり方や伝え方を「大変だけど」と言いながら、何度も何度も考えてカタチにしていく作業を、とても楽しそうに話されていました。どんな状況でも常にチャレンジを重ね細部にこだわる、本物のモノづくりの魅力に触れることができました。
Little MOTHERHOUSE https://www.mother-house.jp/little/
執筆者:奥田 景子 ライター(エシカルファッション、フェアトレ-ドなど)。福岡県生まれ。文化服装学院スタイリスト科卒業後スタイリスト。以降雑誌を中心にしたスタイリスト。社会的なことに興味を持ち、大学院で環境マネジメントを学ぶ。理学修士を取得。2013年から福岡を拠点に移してライターとして活動中。 |