オーガニックインタビューVol.7 アイシス取締役 水上洋子さん 第2回

Global Organic Network代表・中村実代がオーガニックな人に会ってお話を伺うオーガニックインタビュー。「アイシス」取締役で、JOCA日本オーガニックコスメ協会代表でもある水上洋子さんに、オーガニックコスメ事情を伺います。

 
minakami-21
 
─ オーガニックコスメやナチュラルコスメ、自然派化粧品など、自然イメージを売りにするさまざまなコスメがあふれていますが、正直なところ、何を基準にしているのかよくわからない…。

水上洋子さん(以下水上):わからないのも当然かもしれません。というのも、オーガニックフードと違って、オーガニックコスメにはまだ明確な基準がないのです。そもそも、「オーガニックコスメ」という表現は、2001年に、環境NGOアイシスガイアネットが、単行本「オーガニックコスメ」を発行したときに作った言葉なのですよ。

 
─ そうだったのですね。

水上:ええ。私たちには、自然素材を使った化粧品というだけではなく、古くから伝えられてきたナチュロパシー(自然療法)を再評価し、それを現代の生活の中によみがえらせたいという思いがありました。石油原料で作られた日常生活用品に疑問を投げかけ、化学物質漬けら脱し、私たちを真に美しく健康に保つ自然なものを取り戻したい。そうした思いを込めて作り出した言葉なので、とてもこだわりがあります。

 
─ 海外では「エコサート」や「ビオコスメ」、「ネイトゥルー」などいくつか認定基準がありますね。

水上:そうですね。団体によって基準の内容は異なりますが、オーガニックコスメの基準は、あくまでオーガニック原料についての基準です。

 
─ それはどういう意味ですか。

水上:ざっくり言うと、オーガニック原料を使っていても、後から合成成分を加えた化粧品が認定されている、ということです。いくつかの合成成分を認めて、ポジティブリストを作っている。中には、日本ではアレルギー物質とされるものも含まれています。つまり、オーガニックコスメの認定をとった化粧品=まったく合成成分を使っていない化粧品、というわけではないのです。

 
─ どこまで合成成分を許すかを決めている基準、ということですね。どうしてそんなことになるのでしょうか?

水上:いろいろ理由はあると思いますが、基本的にはヨーロッパの環境や風土、そして化粧品メーカーの実状に合わせて作られたからでしょうね。ヨーロッパはとても乾燥しているし、水も硬い地域が多い。だから化粧品としての品質を保つためには、乳化と洗浄が大きな課題となります。製造技術のことも考えると、植物原料を主体とした合成界面活性剤の使用を認めざるをえない…。オーガニックフードに最後に農薬を加えるようなものですね(苦笑)。

 
─ それは矛盾していますね。そういえば、ヨーロッパでは、ほとんどのメーカーが化粧品を100%自然のもので作ることはできないと考えている、と聞いたことがあります。でも、アイシスオーガニック生活便で紹介されている化粧品は100%自然のものですよね。

水上:その点については、私も最近気づいたことがあるんです。というのは、ヨーロッパと日本では「菌(微生物)」に対する考え方が根本的に違う。ヨーロッパのメーカーは、製品に「菌」が含まれることを良くないものとしてスゴく気にするし、実際、抜き打ちで菌の測定検査が入って、出荷を止められたブランドもあるそうです。翻って、日本では、「菌」を悪いものとは思わない。科学的にも「菌」の持つ力を研究し、認めている。そして、発酵技術を活かすことで、合成界面活性剤を使わなくても、優れた化粧品を作ることが可能になることを知っている。日本やアジアは湿潤だから、古来から「菌」と共生してきた。その分、自然とのつきあい方が深いのだと思います。

 
─ では、日本やアジアの伝統的な化粧品を西欧にアピールするのはどうでしょう?

水上: 残念ながら、今の段階では難しいと思います。というのは、日本では、オーガニック原料そのものが少ないので、化粧品にオーガニック原料を使っていくことがまだまだ難しい。そうすると、オーガニック原料の基準であるヨーロッパのオーガニックコスメ認定を取得することはできない。オーガニックコスメとしてアピールする、というハードルはとても高いと言わざるを得ません。

 
─ 環境や風土から生まれる価値観の違い…。深いですね。みんなが納得する基準は作れるのでしょうか?

水上:化粧品の成分は1万種類以上ありますからね。簡単なことではないと思います。「オーガニックコスメ協会」としては、まずは、オーガニックコスメを認証するということよりも、オーガニックコスメの現状をあるがままに知らせることから、ですね。もちろん、消費者自身が「100%を選べる消費者」になることも大切。そのために、専門家と組んでWebを通して情報を発信、オーガニックコスメアドバイザー通信講座も開講しています。その上で、消費者の側に立った明確な基準を定め、それを推奨していく。時間はかかるかもしれませんが、ひとつひとつていねいに。

 
─ そんな「オーガニックコスメ協会」の基準をクリアした商品が並ぶのが「アイシス生活便」というわけですね。

水上:ええ。ですから、掲載にあたってはメーカーと戦うこともありますよ。最初は思いを持って、オーガニックでスタートしたメーカーも、規模の拡大とともに方向性が変わってきたりしますから、いつも厳しい目で選別しています。

 
minakami-23
▲アイシスの事務所には、さまざまな果実や薬草がつけ込まれたガラス瓶が並んでいます。

 
◆厳選したオーガニックコスメや自然食品・雑貨など、人と地球に優しい商品を扱う
セレクト雑貨 アイシスオーガニック生活便のサイト http://www.isis-gaia.net/

◆安心安全なオーガニックコスメを普及する活動をしている
JOCA日本オーガニックコスメ協会のサイト http://joca.jp/

 
 

 

《関連キーワード》
, , ,

人気のWebコンテンツはこちらです

お問い合わせ