植物廃棄物のアップサイクリング。バナナから生地をつくる「BANANA CLOTH推進委員会」の未来

ファッションは、大量に資源を使う環境負荷が大きい産業だと言われています。

廃棄される服を回収して服をつくるリサイクルなど、循環型社会形成のための取り組みも増えました。バナナという農産物から糸をつくり、さらに服をつくる「BANANA CLOTH(バナナクロス)」プロジェクトが始まっています。

 バナナは身近な食べ物ですが、主要生産地はバナナベルト地帯と呼ばれる熱帯・亜熱帯の国々。健康的で手ごろな価格のバナナがどんな植物なのか、知らない人は意外と多いのでは。

日本で開発された「BANANA CLOTH」とは、どんなものなのか。「BANANA CLOTH推進委員会」の笠井さんへお話をうかがいました。

大量に廃棄され環境汚染の要因となっている

日本でも農薬不使用栽培の国産バナナを見かけるようになりましたが、価格が高く一般的ではありません。

日本で販売される「安いバナナ」を支えてきたのが、1970 年代から大量に輸入されるようになったフィリピン産バナナ。年約 100 万トンというバナナの輸入量は日本の生鮮果実輸入の約 6 割にあたり、2017 年現在、80%をフィリピン産が、15%をエクアドル産が占めています(参考:甘いバナナの苦い現実

現地の農園

BANANA CLOTH」で使われているのもフィリピン産のバナナ。まず、笠井さんが「BANANA CLOTH」に関わることになったきっかけをうかがいました。

 45年前のことです。10年以上前からバナナ繊維を研究している方から、バナナの茎が大量に廃棄されている現状を教えていただきました。放置されて腐るのを待つだけの状態で、土壌汚染や地下水の汚濁につながっていると。環境汚染につながっていることを知り、ぜひやりたいと思ったんです」

 じつはバナナは、バショウ科の「草本」という麻と同じ草の仲間。正確にはバナナの「木」ではなく、バナナの「茎」。バナナには1020本くらいの花が咲きますが、この花が実になって収穫された後は枯れてしまいます。完全に枯れるわけではなく、株元から「吸芽(キュウガ)」と呼ばれる、親株の葉の脇から生える新芽を伸ばし、新たに成長していきます。この「吸芽」を株分けすることでバナナは繁殖させることができるそう。(参考:園芸PROJECT

バナナは、一度しか実をつけない! 実を収穫して伐採されたバナナの茎は大量のゴミとなっています。産業廃棄物として処理するしかない状態なのでしょうか。

「一部は堆肥化されているようです。それ以外は廃材なんですね。逆に原料としてみると、ウールやシルクなど天然繊維の中でもポテンシャルが高いなと感じました。世界で廃棄されているバナナの茎は、年間約10億トンにものぼります。さらに、食用のバナナ栽培では、他の綿や麻に比べると、畑にまく水も少なくて大丈夫。強い植物なので農薬も必要なく、繊維を採る材料としては必要最小限のエネルギーで十分です」

 伐採後の処理にコストがかかってしまうこともあり、廃材を買い取ることはエコフレンドリーといえます。現地の雇用にもつながっているのでしょうか。

 「雇用まではまだまだですが、廃材を買取ることで農家さん達の副収入的なものになっているようです」

 また、「BANANA CLOTH」はコットンの中でも最高級ランクにある超長綿繊維スーピマコットンとの混紡です。

 「麻の仲間のバナナファイバーは短繊維。生地にするためには強度が必要なので、繊維が長いスーピマコットンとの混紡になりました。混紡率はスーピマコットン70%、バナナファイバー30%。効率も含めて生産に一番良い混紡率です」

BANANA CLOTHでつくられたバッグ

 

BANANA CLOTHの将来性

BANANA CLOTH」商品開発のご苦労をうかがいました。

「どの産地のバナナファイバーに合っているのか、そこまでたどり着くのに時間がかかりました。そして技術的には、バナナファイバーをワタの状態にもっていくまでが一番難しいんです。茎を手で割くことは日本でもフィリピンでもできますが、工業的に繊維を取り出すことは他の国でもやっていないと思います。さらに、原料を綿(ワタ)にする工場が日本にほとんどありませんでした。技術を持っている工場は、コストが合わず海外へ移転してしまって…工場を探し当てるのにも時間がかかりましたね。何度もやり直し、失敗もあって。バナナ繊維研究者と一緒にブラッシュアップして商品化していきました」

BANANA CLOTHができるまで

初めて天然繊維「BANANA CLOTH」を触った時は、どんな印象だったのでしょうか。

 「そうですね、バナナファイバーは麻によく似た繊維です。綿との混紡ですが、生地にするとサラッとした風合いです」

 これから流通量を少しずつ増やし、環境や人権面での認知度も上げていきたいと語る笠井さん。

 「船で運んでいるところが難しいのですが、CO2の削減へ貢献していることを目に見えるカタチで数値化していきたいと思います。個別契約でなのでフェアトレードとも違うのですが、認証団体と相談してみたいと思っています」

 いま、SDGsの取り組みは必須です。廃材を有効活用する「BANANA CLOTH」は、異業種や教育の現場からも注目されています。

 「今までお付き合いなかった車業界や農業資材メーカーからもお声がけいただいています。マイクロプラスチックの問題もなく、この繊維を生産することで、100年後の地球環境が良くなっていくと思っています。また、バナナは大人から子どもまで身近な食べ物ですよね。小学校、中学校など、学校から教材にとお声がけもいただき、大学でお話もさせていただきました。環境教育の一環として取り入れられるのは嬉しい限りです」

 廃棄すればゴミになるものを、新たな製品にアップグレードするアップサイクリング。今後のチャレンジは、フィリピンだけでなく、インド・中国・南米など、廃棄されている多くの国のバナナの茎を買い取って繊維にできればいいな、と思っているそう。

 大企業に利益が出ても、現地の生産者は貧しいままでは何にもならない。バナナの茎からつくられる「エシカルなもの」に心がワクワクしました。

 

BANANA CLOTH推進委員会 https://cloth-app.com/topics/5154/

 

 

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執筆者:奥田 景子

ライター(エシカルファッション、フェアトレ-ドなど)。福岡県生まれ。文化服装学院スタイリスト科卒業後スタイリスト。以降雑誌を中心にしたスタイリスト。社会的なことに興味を持ち、大学院で環境マネジメントを学ぶ。理学修士を取得。2013年から福岡を拠点に移してライターとして活動中。

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