長野に本社を構えるECOACOというブランドは、人と自然に寄り添い人にも環境にも配慮された服づくりをしています。ECOACOのキーワードはECOLOGY、HEALTHY、FREE。
ECOMCOでおもに使われている素材は、トウモロコシのでんぷんを発酵して作られる「乳酸繊維」です。石油原料ではなく、古来からの天然繊維とも異なる次世代の繊維を美しく機能的なテキスタイルに昇華させることに成功しました。この肌に優しい乳酸繊維の他に使われている素材は、シルク、オーガニックコットン、バンブー、和紙などのグリーン原料でいずれも土に還る素材ばかり。
▲ECOMACOで使われている素材の原材料はナチュラルなもの。
代表取締役でデザイナーの岡正子さんがカラーアナリストとしての経歴があるため、どのアイテムも美しい色に溢れています。日本に息づく昔ながらの伝統技術で、130年の歴史がある京都の西陣の職人とのコラボレーションによって染められているそう。季節に合わせた植物染めも行われています。
▲「りんご」「なの花」「あんず」「りんどう」「カーネーション」で染められたアイテムも販売
素材には、さまざまな葛藤がありました。1998年の長野冬季オリンピックで、ポリ乳酸繊維を使ったショーが開催されましたが、マスコミからは「何をやったら一番エコなんですか」という質問があったそう。それに対して「極論を言ってしまうと、物を作らないことが一番のエコなんですね。そこに答えはないんです。それでも、服で何が表現できるかを考えると、行き着くところはいつも素材でした」。
そして「生分解される木の葉のような服をつくろう」と決心します。「トウモロコシを原料としたポリ乳酸繊維に出合ったのは1997年のことですが、糸の研究を重ねて今も思うのは、糸も最初は赤ちゃんなんだ、ということ。まだ市場に出たばかりの、未完成のものを私たちは手にしてきたんです」。
「オリンピックの時の洋服は、数年経って生分解していました。長所が欠点なんですね。人生の中でいつも思うのは、長所が欠点、欠点が長所ということ。でもそこを育てると、ほかにはないオリジナルになる。生分解するものを、どうやって耐久性と両立させるのか、ということが最初の苦しみでした」と、それでも諦めることなく改良が重ねられていきました。
「その後は、熱に弱いというもうひとつの欠点をどう生かすか、ということ。この時は、しわ加工することで特許をいただくことができました。最先端の繊維企業や伝統工芸の職人の方々に辛抱強くお付き合いいただいて、今では安定供給できるようになりましたが、素材開発はいつも先の見えない長期戦。欠点を長所に、糸の改善をしつづけてきたことで、今のECOMACOがあるんです」。
▲デザイナーの岡正子さん「スピードアップしていく時代に自然が与えてくれるもの、簡単には育たないものに触れたくなります」
素材の欠点を生かすために、チャレンジを続けているECOMACO。長野という自然に恵まれた場所だからこそ強く感じる、自然の大切さと服づくりの矛盾を一つ一つ解決していきました。「自然のエネルギーを身にまとう」がECOMACOの大きなコンセプトだとか。自然の美しさ、心地よさ、安らぎを感じてほしいという服。それを着る女性たちが、自由に自分らしく輝きますように、という願いがECOMACOの服づくりに込められています。
(デザイナー・岡正子から「21世紀は何を原料として、ものづくりをしていくのでしょう」より)
長野発のエシカルブランド「ECOMACO」http://www.ecomaco.com/
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執筆者:奥田 景子 ライター(エシカルファッション、フェアトレ-ドなど)。福岡県生まれ。文化服装学院スタイリスト科卒業後スタイリスト。以降雑誌を中心にしたスタイリスト。社会的なことに興味を持ち、大学院で環境マネジメントを学ぶ。理学修士を取得。2013年から福岡を拠点に移してライターとして活動中。 |