また、茨城県で6年ほど前からオーガニックチキンを生産・販売する「共栄ファーム」では、地元のJAやさとの協力も得て、休耕田を生かした有機飼料米生産を実験的に開始している。適格なデータのない中での試行錯誤であるというが、食味を気にせず多収量を意識した品種を選択し、反当たり20俵を収穫できれば委託生産も可能とする。日本の有機畜産が抱える国産有機飼料の確保という問題点を、地域資源の循環や環境保全の問題も含めながら対応し、産業としての取組みに終始しない展開をみせている。
その畜産農家は現在、コーデックス委員会による世界ガイドラインの成立という外圧もあり、農水省主導による有機JAS制度への組み入れ、法制化が検討されている。しかし、一部には時期尚早という声もあり、その背景には、農水省が今年8月下旬から10月にかけて全国400件程度の有機JAS認証を受けた生産現場の調査に入らなくてはいけないほどの有機JAS制度の不備が目立っていること、そして平成13年度の有機JAS格付けされた輸入有機農産物の量が、国内の3万3734㌧に比較して15万4642㌧と、約5倍の量になっていることなどが挙げられている。日本の有機農業の現場が十分な有機飼料生産にはほど遠い状況にあること、畜産物を含む有機農産物のさらなる輸入が促進されているという指摘である。
現在の有機ブームを支えているのは、昨今の食品事件に絡む食の安全・安心志向のひとつのあらわれである傾向が強く、行政の政策も有機農業を産業として捉える部分が大きい。この産業の部分も有機農業の発展のために必要であるが、食の安全のみに偏らない、環境保護や持続的農業の確立という面も踏まえて、消費者、行政ともに意識して育てていくことが、今後の有機農業を支えることになる。
出典:BioFach Japan 2009 公式ガイドブック
執筆者:株式会社 木香書房「自然と農業」編集部
PROFILE:
1924年に設立し、80年を超える歴史を持つ農業関係出版社。定期刊行物として、環境保全型農業を目指し人々を対象とした季刊「自然と農業」を発行。またその他の刊行物として養鶏関係の技術専門誌である月刊「鶏の研究」がある。定期的に、オーガニック関係の海外視察や、食に関するセミナーを開催している。幅広い視点から企画・取材し、農業の発展に寄与できるような活動を念頭におく。
URL: http://www.kikoushobou.net/
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