有機畜産成功の鍵は何か(自然と農業編集部)

有機農産物の検査・認証制度を定めた有機JAS法の施行から遅れること4年、有機畜産に関する基準案が農林水産省から発表され、法制化に向けて進められている。有機畜産に関しては、コーデックス委員会で平成13年7月に国際基準が採択され、それを受けてわが国でも有機畜産物に関するJAS規格の制定に向けた検討が実施されてきた。その結果、本年2月〜3月にかけて「有機畜産物」「有機加工食品」「有機農産物飼料」「有機加工飼料」のJAS規格原案がそれぞれ了承され、パブリックコメントの募集、WTO通報等の所要の手続き、JAS調査員会総会での議決を経て規格を制定し、平成16年度中に検査・認証制度を開始する予定になっている。わが国において有機畜産が成功する鍵はどこにあるのか。考えられるままに、いくつかをあげてみたい。

 

1. 有機飼料の確保

畜産用の飼料原料の大部分を輸入に頼っているわが国では、有機畜産の飼料を確保することは重大関心事である。規格案によれば有機加工飼料の段階では5%の非有機原材料の使用が可能とし、さらに農場段階では最初の5年間、反芻家畜においては15%、その他の家畜・家禽では20%まで非有機畜産飼料の給与が可能としているが、そうであったとしても有機飼料の確保は非常に難しいといわざるを得ない。有機穀物の確保、日本への原料運搬、日本国内での飼料生産および農場までの運送、専用倉庫の確保、使用できる資材の把握等、飼料の生産・流通段階での有機性の確保は容易なことではない。それによるコストアップも考えられる。さらには生産農場での有機飼料を用いての生産技術の確立等、問題は山積している。

そして何より有機飼料の自給率をどこまで向上させることができるかということである。一部ではこの有機飼料自給率アップのための試み(国産飼料米の生産等)が進められているが、まだ不十分であることは事実であり、今後に期待せざるを得ない。

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