今年から来年にかけて、日本の有機認証制度は大きく変化する。大きくは①JAS法自体の改正と、②有機農産物JAS規格の改正と有機畜産物JAS規格の新規制定の2つの動きにわけられる。
1. JAS法の改正
平成17年6月22日、JAS法が改正され、新しいJAS法が平成18年(来年)3月1日から施行される。有機認定制度の関係では、登録認定機関の立場が大きく変わる。これまでのJAS法では、認定は農林水産大臣が行いその代行機関として登録認定機関が認可を受け業務を行ってきた。しかし、平成18年3月から開始される改正JAS法では、認定は大臣ではなく登録認定機関が行うものと変更された。具体的な違いを紹介すると、これまでは登録認定機関には認定の権限のみが与えられ、取り消し権限はなかったが、改正後は、登録認定機関は認定の付与の業務以外にも、認定の一時停止や取り消しも行うことになった。
JAS法という法律に基づく認定を外部の認定機関に委ねるからには、登録認定機関は従来にも増して信頼ある公平公正な業務を行う認定機関でなくてはならない。このためJAS法では、登録認定機関となるため主に次のような条件を課している。
●業務内容は、ISO/IECガイド65(以下、ISO65)に準拠しなくてはならない。(第17条の2)
●親会社・代表・役員が製造業者や生産者で支配されていてはならない(支配要件、第17条の2)
●財務諸表を事務所に備えつけ、認定事業者その他の関係事業者の求めに応じ公表しなければならない。(第17条の9)
上記の中でISO65とは、認定機関が守るべき内容を定めたISOの要求事項である。
その内容を一言でいえば、「公平・公正な認定を行うため、業務をマニュアル化し、マニュアルに沿って業務を行いましょう」という趣旨のものである。ISO65の要求事項は、それほど分量が多いものではないが、要求されるレベルとしてはISO9001並の品質マネジメントシステムが求められている。
2. JAS規格の改正・追加の動き
(1) 有機農産物JAS規格の5年ごとの改訂
JAS規格は5年に1度見直しを行う。有機農産物のJAS規格は平成12年1月に制定されたのでちょうど5年目であり、平成17年7月15日のJAS規格調査会総会により承認された新しいJAS規格が、秋に告示される予定である。
主な違いとしては、①新しい項目として一般管理という項目ができ、肥料や農薬の使用以外のさまざまな栽培工程においても禁止物質の使用が認められないことが明確になった。②種苗についての項目が細かく規定された、③新規格の別表1に記載されている使用可能な肥料及び土壌改良資材について、「その他の肥料及び土壌改良資材」という項目が、防除効果をもたないものという条件がついた(この「その他の肥料及び土壌改良資材」は今後削除し、物質名の記載されたもののみを認めるような方向で検討されている)
(2) 有機畜産物JAS規格の新規制定
有機畜産物JAS規格は、2年ほどかけて検討がなされ、平成17年8月26日のJAS規格調査会総会で承認された。この規格も10月ごろに官報告示される予定である。
有機畜産物とは、一言で言えば、家畜の行動要求に配慮し(家畜の福祉)、放牧(自由に運動できること)を行い、有機飼料を与え、動物用医薬品をできるだけ抑えた家畜により生産された畜産物といえる。
有機畜産物と有機農産物の制度上の違いは、有機農産物の場合は「有機○○」と表示する場合には、必ず認証を取得し有機JASマークを付した上でないと表示ができない(これを「指定農林物資」という)のに対し、有機畜産物は、「有機○○」と表示する際に、必ずしも認定を取得してJASマークを貼ることは強制されず、マークの貼付は任意とされた。つまり、有機JASマークなしで「有機牛乳」などと表示することは違反にはならない。同じ有機で対応が異なるのは少々混乱が生じるのではないかと懸念される。
(3) 有機加工食品JAS規格の改訂と新規制定
有機農産物原料を由来とする有機農産物加工食品のJAS規格は、有機農産物と同様に、平成12年1月に制定されたので、5年目の見直しがなされた。
一方、有機畜産物が新規にでき、かつ農産物がJASマーク貼付強制で、畜産物はマーク貼付が任意という制度の違いから、有機加工食品のJAS規格は、JASマーク貼付が義務となる有機農産物加工食品(原料の95%以上が有機農産物由来である加工食品)と、JASマーク貼付が任意である有機畜産物加工食品(原料の95%以上が有機畜産物由来である加工食品)及び有機農畜産物加工食品(上記以外で例えば、農産物由来と畜産物由来が半々であるような加工食品)に分けられることになった。
出典:BioFach Japan 2005 公式ガイドブック
執筆者:丸山 豊
PROFILE:
1962年1月6日生まれ。1998年より、オーガニック食品の認証検査員として独立し、国内及びアメリカ・EUの認証機関の検査員として検査を実施。業務を法人化し、(株)ABCフードシステム代表取締役。NPO法人日本オーガニック検査員協会にて検査技術講習会の講師を担当。また2003年度及び2004年度農水省委託事業における検査員研修会講師のほか、JAS協会などが主催する有機農産物及び加工食品のJAS講習会の講義なども実施。2002年度JETRO南米有機食品貿易促進事業で専門家として派遣された。現在、日本オーガニック検査員協会副理事長。
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