2.家畜排泄物の適切な処理
有機畜産においては、家畜の排泄物処理について十分な配慮が必要です。自然循環機能の維持増進を図ることが求められる有機畜産で、家畜排泄物が環境汚染につながるような処理がなされるようであれば、有機畜産自体の存在が問われかねないからです。
実は、家畜の排泄物処理については、有機畜産に限らず、畜産業における重要な課題となっています。環境保全の観点から、昨年の11月には環境三法が完全施行され、家畜排泄物を環境に負荷をかけない形で処理することが、生産者には義務付けられました。
家畜排泄物を堆肥化し、地域の耕種農家等で使用してもらうような自然循環機能を促す仕組みづくりが求められるわけです。有機農業を行う生産者との連携も積極的に行っていく必要があるでしょう。
3.畜産に精通した検査員の養成
以前、有機農産物の検査・認証制度がスタートした際には、検査員が質・量ともに不足する事態が発生しました。今回、新たに有機畜産の認証制度がスタートすることで、同様の問題が発生することが予想されています。
特に、長い畜産の歴史を持つ欧米と比較し、日本は「畜産」と「有機」の文化の経験が共に乏しい現状があります。それに伴って「有機」と「畜産」に精通した検査員の数が少なく、その養成が有機畜産を国内で広めるための急務の課題といえます。
4.LOHAS層に受けいれられるオーガニック食品
有機畜産は、市場のニーズに応える非常に将来性のある分野だと考えています。健康でありたいし、環境にも優しく暮らしたい、持続可能な社会を作っていきたいという思いを持つ消費者が、価格面で慣行のものと比較して高い有機食品を買う可能性が市場として十分に存在するとみるからです。
その裏づけとして、最近LOHAS(Life of health and sustainability ロハス)という言葉を聞いたことがある方も増えてきたのではないでしょうか。ロハスは健康や環境を重視した新しい価値観とライフスタイルを持つ人達のことを指す言葉で、環境保全志向の雑誌の誌面でも度々取り上げられています。
三菱総合研究所のホームページによると、ロハス・コンシューマーは成人の2〜3割、ロハス商品の市場規模は30兆円とも言われており、決して小さな市場ではありません。また、今後その市場規模は拡大するとも言われています。
有機畜産物はこのロハス層に受け入れられる食材であり、その将来性には期待できます。食肉分野において、高付加価値商品の新たなカテゴリとして期待される分野がオーガニックビーフなどの有機畜産物だというわけです。
出典:BioFach Japan 2005 公式ガイドブック
執筆者:株式会社 木香書房「自然と農業」編集部
PROFILE:
1924年に設立し、80年を超える歴史を持つ農業関係出版社。定期刊行物として、環境保全型農業を目指し人々を対象とした季刊「自然と農業」を発行。またその他の刊行物として養鶏関係の技術専門誌である月刊「鶏の研究」がある。定期的に、オーガニック関係の海外視察や、食に関するセミナーを開催している。幅広い視点から企画・取材し、農業の発展に寄与できるような活動を念頭におく。
URL: http://www.kikoushobou.net/
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