ドイツオーガニック業界の歩みと動向(浅野・レッケブッシュ 経緯子)

ドイツオーガニック業界の今後

2009年は折からの経済危機もあり、市場の成長に歯止めがかかるのではとする見方が多勢であった。しかし、前述のZMPによると、 2009年度第1四半期の結果は、成長率こそ鈍化したものの、売り上げ高は堅調に推移しているという。第1四半期は1月から3月までの冬場にあたり、需要の高いオーガニックの野菜や果物等の供給が充分ではない。このため、第2四半期の速報が待たれるところであるが、大半の専門家がオーガニック市場の成長率は鈍化するものの、今後も堅調な伸びが続くと予想している。

これまでドイツのオーガニック業界のリーダー達は、市場全体の拡大と同時に、自社シェアの防御や拡大に努めてきた。前者の目的は、量販店を巻き込むことによって到達された。これまでオーガニック製品をあまりよく知らなかった消費者や、買わずにいた消費者を引き付け、新規ユーザーをみつけることに成功したからだ。しかし、折からの経済危機もあり、今後さらなる市場の急激な拡大は望めない。それでは、自社シェアの防御や拡大のため、今後どのような戦略を取っていくのであろうか。その答えが、2009年のオーガニック専門見本市 Biofach 2009に垣間見られたように思う。新たなテーマにフェアトレイドが選ばれ、特別展示が企画されたのである。通常、他社との差異を強調するためには、一貫した一つのポイント選び出し、長期に亘りプロモーションしていくのが有効であると言われている。このため、ロイヤルカスタマーである常連の消費者グループを相手に、自社商品にフェアトレードという付加価値を付け、企業イメージの向上を図ろうとしていると考える事もできる。

また、2007年から2008年に行われた幾つかのリサーチでは、このリーダー達の取り組みを正当化するような結果が得られている。消費者が買い物を行う際、倫理や社会的な側面を考慮する頻度が多くなってきていると指摘しているのだ。企業が将来的に成功するためには、従来の取り組み事項に加え、首尾一貫としたエコロジカルなマネージメントを事業領域に加えられなければならないと結論付けている。また、エコロジカルなマネージメントの利点として、製品設計から販売までの価値連鎖におけるリスクを抑え、長期的に安定した資材調達関係が得られるとしている。さらに、従業員のモティベーションや企業への帰属意識、高い企業評価が得られるとしている。既に、リーダー達のホームページで、フェアトレードや諸外国での生産プロジェクトの支援が強調されるようになったことを書き添えておきたい。

 
出典:BioFach Japan 2009 公式ガイドブック
執筆者:浅野・レッケブッシュ 経緯子

PROFILE:
ニュルンベルク大学経営学部在学時より国際見本市、ドイツ企業や日本企業の商談通訳に従事。現在は、国際見本市に出展する企業のサポート業務やビジネスコンサルティング業務を中心にドイツと日本にて活動。

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