7. GOTS認証のポイント
GOTS認証の要点は、
- GOTS認証の対象となる製品は、(1)オーガニック繊維を70%以上使用していること、(2)合成繊維の混用は10%まで(ただし、ソックス・スポーツウエアは25%まで)認められる、(3)通常の農法による同じ繊維の混用は認めない、という条件を満たすものに限られる。
- 製造工程では、基準に従って化学薬品の使用を制限した製造を行っていることを確認する。
- 働く人たちの労働条件が守られていること、例えばアジア・アフリカ諸国の児童労働はないか、劣悪な労働条件でないかをチェックする。
以上の要件を満たすために、各工場では、十分な管理体制を整えていることが要求される。
8. 生産の全工程で守らねばならない条件
オーガニック繊維を取り扱う製造加工の全工程にわたって、下記の厳格な規制が、GOTS基準に詳しく設けられている。
- オーガニック繊維を扱う工程では、それ以外の繊維を完全に分離し、混入しないようにし、保管場所も別に確保し、表示を徹底する。
- すべての使用薬品について、基準を順守しMSDS(化学物質等安全データシート)によるチェックを行う。
- 危険な物質は排除する。対象となるのは、例えば、重金属、ホルムアルデヒド、遺伝子組み換え種子など。状況に応じて製品の残留化学物質検査が要求される。
- 加工工場の廃水処理装置を完備する。
- 全生産工程で国連ILOの定める最低社会条件を順守する。
9. GOTSの普及状況と日本における問題点
世界中でGOTS認証を受けた会社は、2009年には55カ国の2,811工場であったが、日本ではまだ10数社にすぎない。
あまり普及しない理由には、日本繊維産業のおかれた状況に原因があると考えられる。
ひとつは、認証機関の問題。日本では、農業の有機JASの認証機関は多いが、繊維の認証が出来る機関は、コントロールユニオン(オランダ)とエコサート(フランス)という国際的に手広く事業を展開している2つの認証機関しかない。GOTS認証ができる認証機関は、ISO 65の認定(accreditation)という監査を受けないといけないが、日本の食用農作物の認証機関でも、1つか2つしかこの監査を受けていない。この監査には多額の経費がかかり、日本でGOTS認証機関がふえる可能性は低い。
もう一つは認証費用の問題で、アパレルメーカーが商品企画をして繊維製品を生産するとき、紡績、織編、染色、仕上げ加工などの工場に製造を発注するか、中間製品を手当てすることになる。工場には得意技術の違いがあり、規模の大きさも違い、新しい商品作りをするために多くの工場が関係して製造される。アパレルメーカーは、つねに新しい企画の商品をつくっていくから、沢山の工場を駆使して生産をする。すると、1アパレルでも年間に何十という工場を使うことになる。
オーガニックコットン製品の認証を行うためには、製造に関係する工場のほか運送・倉庫も全て検査の対象になる。1工場で年間当たり数十万円規模の認証費用がかかると言われる。小規模の生産では、とても受け入れられる費用ではない。
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