世界で戦えるオーガニック農家を目指して!六次産業化で生まれた「d:matcha」のスイーツ

京都・和束(わづか)町は、古くから香り高い高級煎茶を栽培し、現在も宇治茶の4割弱を生産する産地です(参考:和束町「和束のお茶」)。そんな歴史ある地で、お茶の栽培から加工、商品の企画・開発、販売までを一貫して自社でおこなう「d:matcha(ディーマッチャ)」。人気の宇治茶ティラミスシリーズに、お茶と無農薬国産レモンを使った「抹茶レモン」が加わり、7月からオンラインストアで販売がスタートしました。

(右)抹茶/(左)ほうじ茶/(下)抹茶レモン/(上)ミックスベリー抹茶
期間限定「宇治抹茶レモンティラミス食べ比べセット」
4個セット:2,160円((税込)

有機JAS認証取得に取り組み始めてから2年目という農業生産法人「d:matcha」。栽培農家さんは、販売戦略や企画立案などは苦手な人が多いのが現状ですが、「d:matcha」は同じ和束町に店舗兼カフェも運営しています。さらに海外市場まで視野にいれたマネジメントがおこなわれています。2016年に創業した「d:matcha」で国内ECを担当する田中美里(たなか みさと)さんへお話をうかがいました。

日本の伝統文化を伝え健康に良い素材に取り組みたい

3月に新茶摘みがおこなわれます

d:matcha」は、代表取締役の田中大貴(たなか だいき)さんと美里さん、大貴さんの弟さんの千盛(ちせい)さん、阿嘉洋来(あか ひろき)さんが創業メンバー。田中さん達は、皆農学部出身で、いつか農業で起業していという夢を持ちつづけていたとか。

「日本はいろいろな面で起業するのが難しい環境です。社長はまず経験を積んでからと外資系のコンサルティングファームに就職しました。その後、海外市場を見据えて、ボストンに留学してMBAを取得後、ドーナッツプラントのCEOを務めたりしながら知識を深めていって。私は、実家がみかん農家だったので、農業に対して興味がありました。就職したのは銀行ですが、そこで法人営業を担当し、経営について俯瞰的に学ぶことができました。阿嘉は同じ農学部でも、実践に近いほうです。栽培や生産の技術的な面を担当しています

茶畑の「farm to table」

世界では10兆円規模と言われるオーガニック市場も、日本ではまだまだ遅れています。

「やはり学んでいるだけではだめだと思い、お茶農家さんへ農業研修して起業しました。私たち夫婦は経営が専門で、弟は生産が専門と得意分野が分かれていますが、それでも一人が何役もこなしていかなくてはいけません。皆が器用に仕事をこなしていかないと成り立たないですね」

農業の中で、お茶を選んだ理由は何でしょうか。

「私たちは『人間の幸せは健康から生まれる』と思っています。社長はドーナッツプラントでフード業界の知識を身に付けましたが、もっと健康に良い素材に取り組みたいという思いがありました。お茶の市場が世界で伸びていることも理由のひとつです。学生時代を京都で学んだこと、お茶の伝統的なストーリーや文化にも惹かれて、お茶農家になることを決めました」

 農業の新規参入で難しいのは、畑を獲得することだそう。そこで、日本の地域の課題がプラスに働くこともありました。

「農家さんが手放したくなるような畑は、耕作放棄地が多いのですが、そういう条件が悪いところを引き継がなければならなくて

でも最近オーガニックに取り組めるようになったのは、高齢化で畑を手放す農家さんが増えてきたからなんです。隣が慣行栽培では農薬が流れてきて難しかったのですが、広い面積で手放す方が増えてきました」

急斜面で川霧が発生する農地

和束町の畑の特徴でもある立地は、斜面がきつく過酷なもの。大変なこともたくさんありそうです。

「その立地のおかげで、お茶は香りが良く、霧がかりやすいため、非常に柔らかな味の旨味がのったお茶ができます。農地の特徴が出る小規模農家の良さを大事にしたいと思います。

オーガニックは確実に世の中の流れなので、早くノウハウを蓄えなければと思っています。農薬不使用でも、しっかりと手をかければ品質を落とさず良いお茶ができることを学びました。1年に3回収穫が可能ですが、d:matchaでは一番甘くて美味しい春の一番茶しか、店頭では販売していません」

研究された抹茶とレモンのマリアージュ

今回の新商品スイーツ「抹茶レモン」については?

「じつはお茶と果物は相性が良いんですよ。濃厚な抹茶クリームの風味に無農薬国産レモンの爽やかな味わいが邪魔をせずに、お互いを高めあっているような、非常に良いコンビネーションです。暑い夏にぴったりのスイーツですね」

販売では現在のライフスタイルに提案したい思いもあります。

「オンラインのお客様は20代~30代の若い世代が中心なので、家に急須がない人が多いんです。そのため、お菓子には、お茶の文化の間口を広める役目もあります。初めはお菓子から入って、急須を使って『シングルオリジン』に触れていただいたり、お茶の世界にどっぷり浸かってほしいです()

ヘルシー・スイーツも開発しているところだそう。

「店舗があるので、販売員がお客様のニーズを把握しやすいのは強みですね。販売から出てくるアイデアも含めて、思いついたらすぐに試作できる。スパンが短くて済むんです」

自家栽培の抹茶のみが使われています

環境保全型の農地では、いろいろな生物と遭遇しそうです。

「いますよ! いろんな生き物が集まってきます。アブラムシが出てきたらテントウムシやクモが寄ってきたり。自然の力を借りながら、木の状態を健康に保っていく。これからそれが勉強だと思います。オーガニックにとって大切なことですね」

 カフェでは体験プログラム(https://dmatcha.jp/pages/store-information)も開催されています。

害虫も含め、自然界の生き物たちは「生態系を豊かにする」という共通の目的を持っているといいます。豊かな生態系の中で栽培されるお茶の味わいやスイーツを試してみたくなりました。

 

D-matcha オンラインショップ https://dmatcha.jp/

企業情報

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執筆者:奥田 景子

ライター(エシカルファッション、フェアトレ-ドなど)。福岡県生まれ。文化服装学院スタイリスト科卒業後スタイリスト。以降雑誌を中心にしたスタイリスト。社会的なことに興味を持ち、大学院で環境マネジメントを学ぶ。理学修士を取得。2013年から福岡を拠点に移してライターとして活動中。

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