新しい年を迎えお正月のおせち料理にはじまり、1月7日七草粥、10日鏡開きのぜんざい、15日小正月の小豆粥、20日二十日正月のあら汁、そして2月2日節分の恵方巻。
行事食を楽しんでいるうちに、早いものでおひなさまを飾る時季がやってきました。雛祭りとは、二番目の五節句である「上巳の節句」。今年は五節句についてご紹介したいと思います。
五節句
博多人形の雛人形
節句とは「季節の節目となる日」として行う年中行事で中国より伝わりました。1月7日「人日の節句」、3月3日「桃の節句」、5月5日「端午の節句」、7月7日「七夕の節句」、9月9日「重陽の節句」の五つです。
陰陽五行の考え方を大切にする中国では奇数がめでたい数字。「奇数が重なると逆に不吉である」と言われ、厄除けや禊が行われたことが節句の始まり。五節句は日本に伝わると不吉という説はなくなり、江戸時代に「縁起のよい吉祥の日」として暦に制定されました。雛人形の三段・五段・七段飾りや11月の七五三。奇数なのは「奇数がめでたい数字」という中国の考え方からきています。
人日(じんじつ)の節句・七草の節句
春の七草(写真上より右回りに、せり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろ)
お正月が終わり七草粥をいただく1月7日は「人日の節句」でした。由来は、古代中国で元旦に鶏、2日に狗(犬)、3日に羊、4日に猪、5日に牛、6日に馬、7日に人、8日に穀を占っていたこと。7日は人の日(人日)で人を大切にする日。その日は犯罪者に対して刑罰を行わなかったそう。
また、一年の無病息災を願いお正月の祝膳で疲れた胃腸を休めるため七種菜羹(ななしゅさいのかん)と言われる七種類の野菜が入った吸い物を食べていたとか。その風習と元々日本にあった「若菜摘み」の風習が融合したのが「七草粥」。私はオーガニックスーパーで七草セットを購入。毎年土鍋でコトコトつくるのが楽しみです。若菜の生命力感じる苦味成分は植物性アルカロイドというデトックス作用があるもの(参考:日本予防医学協会「健康づくりかわら版」)。今年もいただいた後には、心が清々しくなりました。
上巳の節句・桃の節句・雛祭り
有機野菜たっぷりのちらしずし
2月3日の立春を過ぎ、あちらこちらで雛飾りを目にするようになりました。3月3日は「雛祭り」もしくは「桃の節句」として有名ですが、正しくは「上巳(じょうし/じょうみ)の節句」と言います。
起源は、中国で旧暦3月の最初の巳の日(上巳の日)に行われた邪気払いの儀式「上巳節」。水辺で身を清め一年の厄を祓い無病息災を願います。その風習が日本に入り、平安時代の宮中での人形遊び「雛(ひいな)遊び」や厄や穢れを人形(ひとがた)にうつして流す「流し雛」と結びつき、のちに「雛人形を飾り女の子の健やかな成長を願う雛祭り」となりました。
「桃の節句」と言われるのは、旧暦3月に満開を迎える桃は長寿や魔除けの象徴の木。
桃の花を飾ることで邪気を払い、家族の健康を守ると信じられているからです。中国から伝わった桃饅頭も、桃が不老長寿などの縁起のよい食べ物だから。ひなまつりや長寿のお祝いなどで使われます。
その他、雛祭りの行事食と言えば、ちらしずし・蛤のお吸い物・菱餅・白酒・ひなあられなど。
ところで菱餅の三色には意味があるのをご存じですか? 真ん中の白は雪、雪の下には芽吹いてきた緑の新芽、上のピンクは桃の花。まさに春の風情ある景色です。白は清浄、緑は健康、ピンクは魔除けの意味も込められています。
雛人形は、京都でつくられる「京雛」と関東でつくられる「関東雛」にわけられます。京雛は「男雛が向かって右、女雛が向かって左」でしたが、大正天皇が西洋式の配置をしたため、関東雛は「男雛が向かって左、女雛が向かって右」に。それが現代の主流となりました。
雛人形を飾るおすすめの日は、二十四節気の雨水(2025年は2月18日)。それは、雛祭りが「流し雛」に由来するため「水が豊かになる雨水に雛人形を飾り始めると良縁に恵まれる」と言われるから。そして、片づけるのによい日は、次の節気である啓蟄(2025年は3月5日)という説もありますが、大切なのは、カビがはえないよう晴れた日を選ぶことです。
TOP画像の雛人形は、私が東京在住時、父が送ってくれた地元福岡の博多人形のもの。[なにかな?]と、開けてみたら美しい雛人形! ビックリしたけれど、とてもとてもうれしかった記憶があります。あれから約30年。おひなさまを箱から出すときはいつも亡き父のことを想います。この時季、さまざまな場所で目にする雛人形。ちょっと足を止めておひなさまを愛でながら春の訪れを感じてみてはいかがでしょうか。
ポジティブ・エイジング アドバイザー、健康管理士一般指導員、食育インストラクター。福岡市出身。時間とともになんとなく年をとるのではなく、加齢に対して前向きに準備をしながら素敵な年齢を積み重ねてゆく=「ポジティブ・エイジング」を提唱。東洋医学のある暮らしでうつ病や難病も克服。お子さんからシニアまで幅広い世代の方に、セミナーや講演会を開催。福岡県立高等学校食育出前講座、西南学院大学市民講座などの講師を務める。
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