【 五十嵐和恵の季節を楽しむくらし Vol.26 】 季節の手仕事

季節ごとに楽しむものはいろいろありますが、私にとって一番のお楽しみは食べることです。その時季にしかない旬の食材をおいしく長く楽しむために一手間かける「季節の手仕事」。梅雨の便りが聞こえてきた今回は梅仕事についてお伝えいたします。

梅仕事

梅仕事とは、梅が旬を迎える季節に梅干しや梅酒などの保存食を作ること。梅の熟し具合によって適したものが変わります。青くて硬い青梅は、梅ジュースや梅酒、梅醤油、梅味噌などに。少し黄色く色づいた梅は梅干しなどに。黄色く熟し甘い香りがする黄熟梅は梅ジャムなどにするのがおすすめです。

かつてはスーパーで袋いっぱいに入った梅を見ても「むずかしそう!」と手の出なかった私。ある時作り始めたらとても楽しく、仕込んだものが出来上がるのを待つ喜びとそれを食べたときのおいしさでやみつきに。作ったものをアレンジすることでお料理のレパートリーも一気に増えました。

梅の効用

中国が原産地と言われる梅。12世紀ころ書かれた中国最古の薬物学書『神農本草経』にはすでに梅の効用が。青梅を燻製にした烏梅(うばい)には「肺の組織を引き締め、腸の動きを活発にし、胃を元気づけ、体内の回虫などの虫を殺す効用がある」と書かれています。

日本にいつ伝わったのかは定かではないそう。最初は観賞用でしたが、平安時代中期になると梅干しが作られるように。塩で漬けた梅に赤紫蘇を加え赤くした梅干しは、日本独自のものです。

日本最古の医薬書「医心方」(984)には梅の効用が書かれています。「熱を下げ、心臓病を癒し、手足の痛みや麻痺を和らげ、下痢を止め、口の渇きを止め、皮膚の荒れを治し、青黒いあざにも効果的です」とあります。

2016年の申年に作った梅干し

申年の梅は薬

平安時代の村上天皇は疫病が流行ったとき、当時は高級なものだった梅干しの力で人々を救った。また自らも病にかかったとき、梅干しと昆布を入れたお茶を飲んで回復した、と言われています。これが元旦に飲む縁起物として現代まで受け継がれている「大福茶」の起源。この年が申年であったことから「申年の梅は縁起がよく薬になる」と珍重されるようになりました。

申年生まれの私。申年には例年よりたくさんの梅干しを作ります。2016年の申年に作った梅干しは漬け込んだ時の塩が結晶化しキラキラと美しく。次の申年まで「薬」として大切に利用したいと思っています。

梅は万能薬

梅干しが庶民の間でも食べられるようになったのは江戸時代。発病すると3日ほどで命を落としてしまうから「三日コロリ」とも呼ばれたコレラが猛威を振るったとき、梅干しは治療薬として活用されたそう。コレラ菌は梅干しに含まれる有機酸に弱いことが後の研究で解明。素晴らしい殺菌パワーです。

戦争下には兵士たちは梅干しを持って戦場へ。いわゆる「日の丸弁当」が登場したのも日露戦争のときだと言われています。

長い歴史を経て今に至る梅。現代では科学によって、糖尿病・胃がん・骨粗鬆症などの予防や、脂肪燃焼効果、抗アレルギー効果、食欲増進効果、整腸作用、殺菌作用等々、さまざまな効果効能が確認されており正に万能薬です。

気がつけば保存ビンだらけに

毎年無農薬や無肥料で手間暇かけて作られた梅や赤紫蘇と再会するとき、「また今年も出会えた」という喜びでいっぱいに。感謝の気持ちをもって梅仕事をすると、できあがったものはとてもとても愛おしくなります。もう今年はこれでおしまい!と思っても、また梅を見つけるとなにか作りたくなり… キッチンが保存ビンだらけになることも。

「梅はその日の難逃れ」「梅は医者いらず」などと言われる梅。梅仕事は先人の知恵。愛情込めて丁寧に作ったものをいただくことは健康の基本だと思います。梅雨になると外での活動はへりますが、家でゆったり梅仕事をするのにピッタリ。今年はなにを作ろうかな?食卓の上の青梅を目にしながら、今ワクワクしています!

※梅雨の養生については「 五十嵐和恵の季節に合わせた暮らし方Vol.7 」をご覧ください。

 


ポジティブ・エイジング アドバイザー、健康管理士一般指導員、食育インストラクター。福岡市出身。時間とともになんとなく年をとるのではなく、加齢に対して前向きに準備をしながら素敵な年齢を積み重ねてゆく=「ポジティブ・エイジング」を提唱。東洋医学のある暮らしでうつ病や難病も克服。お子さんからシニアまで幅広い世代の方に、セミナーや講演会を開催。福岡県立高等学校食育出前講座、西南学院大学市民講座などの講師を務める。
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