【 五十嵐和恵の季節に合わせた暮らし方 Vol.20 】 おせち料理

おせち料理はなにを作ろうかな?今年もそんな時季となりました。コラムVol.10と15ではおせち料理の由来についてご紹介しました。今回は餅とお雑煮についてお届けします。

餅は昔から神様に捧げる神聖なもので、お祝い事や特別な日に食べる「ハレ」の食べ物でした。長く延びて切れないことから、長寿を願う意味もあります。お正月に餅を食べるのは、新しい年の健康と幸福の願いが込められているのです。

餅の形は二種類。鏡餅の分身で「円満」を意味する丸餅。そして、江戸時代の人口増加に伴い餅を早く作るため、餅を板状にのばしたのし餅を切って量産するようになった角餅。基本的には岐阜県の関ケ原辺りを分岐点に、西側が丸餅、東側が角餅と言われています。

博多雑煮と栗配箸 

 

お雑煮 

雑煮の語源は、色々な具材を煮合わせた「煮雑ぜ(にまぜ)」。新年を迎えるにあたり餅を他の産物と一緒に年神様にお供えします。そのお供えを下げていただくのがお雑煮。餅とともに海の幸、山の幸、野の幸をお椀に盛り込み、旧年の収穫や無事に感謝し、新年の豊作や家内安全を願うものです。

丸餅か角餅か餡餅か、餅を焼くかゆでるか、醤油仕立てか味噌仕立てか、シンプルなものか具沢山なものか、お雑煮の種類は様々。鶏肉と小松菜、焼いた角餅にすまし仕立ての東京雑煮、頭芋とゆでた丸餅に白味噌仕立ての京都雑煮、ゆでた丸い餡餅と大根・人参に白味噌仕立ての香川雑煮など、だしも具もそれぞれの地域や家庭で異なります。皆さまのご家庭ではどんなお雑煮を食べますか? 

博多雑煮 

私の住む福岡市の博多雑煮も特徴的です。

だしは焼きあご(とびうお)。なぜ「あご」と言うかは「あごが落ちるほどおいしい」から、という説もあります。海上を飛び跳ねるとびうおは、身が引き締まって脂肪分が少ないので甘みのある上品な味のだしがとれます。炭で焼くことでより脂肪分が抜け、魚のうまみが凝縮。香ばしさもおいしさに加わります。

具はかつお菜とブリ。かつお菜は博多に古くから伝わるアブラナ科の葉野菜。茎の部分がかつお節の風味があることから、この名になったそう。漢字にすると「勝男菜」勝つ男の菜葉です。ブリはヤズ→イナダ→ハマチ→ブリと大きさによって名前が変わっていく出世魚。どちらも縁起物です。

その他の具は、ゆでた丸餅、里芋、人参、椎茸、かまぼこなど。博多雑煮は具沢山なので、これだけでおなかいっぱいになります。

焼きあごとかつお菜

 

栗配箸

もう一つ博多のお正月で特徴的なのが、栗の枝で作った栗配箸。現在では街で目にすることはなく、博多の人でも知らない方が多いです。私は子どものころ、小さい手にゴツゴツして歪んだ栗配箸は使いにくく、悪戦苦闘しながら食べたことを覚えています。

栗は橋や船、線路の枕木にも利用されるくらい硬くて湿気にも強い木。今では使われませんが、博多弁で都合ややりくりを「まんぐり」と言います。商人の町であるが故、事の繰りまわしや金繰りがうまくいくように、と栗配箸に願いを込めたようです。

今回コラムでご紹介するにあたり実物が欲しい!と探しました。見つけたのは「博多の台所」と言われる柳橋連合市場。一軒だけありました。八女茶を扱う江崎製茶園。店主自ら製作中でした。福岡県八女市はお茶の産地。ご自身の土地にある山栗なので農薬は一切使用していないそう。ぜひコラムに使わせてほしい、とお願いし、削ったばかりでまだ木の水分が残る栗配箸を特別に購入させていただきました。

店主がおっしゃるには、今では作る人がいなくなり栗配箸は福岡市内でも見なくなった。むかしは太めの栗配箸をお正月に使い始め、削りながら一年間使っていた。料亭には今でもおろしている。と。貴重なお箸を手にすることができました。

江崎製茶園で製作中の栗配箸

 

栗配箸を使うのは何十年ぶりでしょう?コラムのお陰で良いきっかけができました。お正月が今から楽しみです。これからは日に日に慌ただしくなります。どうぞ皆様お元気でよい新年をお迎えください。

 


五十嵐和恵
ポジティブ・エイジング アドバイザー、健康管理士一般指導員、食育インストラクター。福岡市出身。時間とともになんとなく年をとるのではなく、加齢に対して前向きに準備をしながら素敵な年齢を積み重ねてゆく=「ポジティブ・エイジング」を提唱。東洋医学のある暮らしでうつ病や難病も克服。お子さんからシニアまで幅広い世代の方に、セミナーや講演会を開催。福岡県立高等学校食育出前講座、西南学院大学市民講座などの講師を務める。
公式Instagram

 

※おせち料理については「 五十嵐和恵の季節に合わせた暮らし方Vol.10、15 」(下記)を併せてお読みください。

五十嵐和恵の季節に合わせた暮らし方Vol.10

五十嵐和恵の季節に合わせた暮らし方Vol.15

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