2024年のノーベル平和賞に、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)が授与されました。被爆者たちによって、訴えられ続けてきた核廃絶。スピーチも心打たれるものでしたが、核兵器がなくなるまでには、どれだけの時間がかかるのだろうかと感じます。
多様な人間関係や社会に平和が生まれることは難しいのでしょうか。
多様性の尊重は重要視されながら、まだそれに反する現実もあります。今回は、自然豊かな場所で、多様性を持つ人々が集まり、ワイン造りを行う「余市ピースワイン・プロジェクト」を紹介します。
「余市ピースワイン・プロジェクト」は、ワインづくりを通じて世界の多様な国籍、文化の人々が交わり、共生することを体験したり、考えたりする機会を創出するために「ユナイテッドピープル株式会社」と「NPO法人 北海道エコビレッジ推進プロジェクト(余市エコビレッジ)」との共同プロジェクトとして2022年に始まりました。
ピースワインの目標は、国境や宗教を超え年間で100ヶ国の人々の参加を得ながら平和を願ってブドウを栽培しワインを造ること。
余市エコビレッジのブドウ畑(ヴィンヤード)
ユナイテッドピープルは「人と人をつないで世界の課題解決をする」ことをミッションに掲げ、映画買い付け・配給・宣伝・制作までを行っています。さらに、中東のレバノンからナチュラルワインの輸入販売を行っています。
一方、NPO法人 北海道エコビレッジ推進プロジェクト(HEPP)は、「持続可能な暮らしと社会」を創造するための技術や考え方を学び広める団体。地域住民が協力し合い、食料など自分たちの暮らしに必要なものをできるだけコミュニティ内および地域のネットワークで確保することは、持続可能なまちを創造することにつながると考えられ、安全な食やエネルギー、環境、孤独、老後や子育てに関する不安などを解決する場となっています。
夏には除草、摘芯、誘引などの仕事
エコビレッジのワインはブドウ栽培から醸造まで、ほぼ手作業で行われています。環境への負荷が少ない栽培や醸造技術と共に、プロセスにたくさんの人がかかわっているのが特徴。学生ボランティアから海外の方まで、コンセプトは多文化共生。目指すのは、みんなの笑顔が詰まったワインづくりだそう。
1年目は、16ヶ国からの参加者とともに5品種。2年目にはさらに5品種を植え付けし、イタリア、イスラエル、オーストリア、韓国、タイ、ドイツ、香港などから参加があったそう。アフガニスタンやロシアイスラエルからもルーツのある人たちが参加し、新たなブドウが植えられました。
これまでの参加者は、30ヵ国以上から。レバノンのエディは、故国でシリア難民を受け入れ、異教徒とともにワインを造っているという醸造家でした。彼らの国々の話を聞きながら、世界の広さやつながりを感じています。
今年の作業は雨の中で行われました
今年4年目の「余市ピースワイン・プロジェクト」。北海道の留学生を招いて作業するようなインターナショナルなイベントを開催予定。昨年仕込んだ試作品も完成を期待しています。
ブドウの品種は合計21品種になりました。将来は、多様な品種を混ぜてロゼをつくる予定。この“ロゼ”には意味があります。
「ユナイテッドピープル株式会社」代表取締役の関根健次(せきね けんじ)さんは、「世界は、白黒はっきりさせようと、対立しがち。白でもなく、赤でもない、その間を、調和をロゼで表現したいんです! 合計21品種とする理由は、ピースデーが9月21日だから。来年には試作品が出来そうです。偏見を取り除きたい。人種、国籍や信じている宗教によって、偏見を持たれ、人間性以前にその属性だけで憎まれてしまうことが残念です」と語っています。
中央左が関根さん
さらに「共に美味しいワイン(ブドウジュース)を造るという共通目標は、あらゆる壁を越え、扉を開き、人々の心をひらき、そしてつなぐ」という信念も印象に残りました。
いろいろな国の人たちが集い、植物を観察し、同じ作業をしながらものづくりを行う。話し合い、感想や意見を述べてみたり、時には喧嘩したり…。「余市ピースワイン・プロジェクト」のワイン造りから、強い信頼感が生まれてきそうです。
余市ピースワイン・プロジェクト https://upwine.jp/pages/yoichi
ブドウの植え付け、剪定、雑草抜きなどヴィンヤードで作業したら、ぜひゲストブックにメッセージを!
If you have volunteered for this project, we would love to hear your thoughts; please leave a message in the comment book.
ユナイテッドピープルワイン https://upwine.jp/
NPO法人 北海道エコビレッジ推進プロジェクト(余市エコビレッジ) https://ecovillage.site/
オーガニックライフスタイルEXPO in 東京
会期:10月2日(木)~4日(土)
会場:東京都立産業貿易センター 浜松町館
*出展社募集中です
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執筆者:奥田 景子 ライター(エシカルファッション、フェアトレ-ドなど)。福岡県生まれ。文化服装学院スタイリスト科卒業後スタイリスト。以降雑誌を中心にしたスタイリスト。社会的なことに興味を持ち、大学院で環境マネジメントを学ぶ。理学修士を取得。2013年から福岡を拠点に移してライターとして活動中。 |
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